今更ながら、207の試乗

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諸事情により307swが入院することになり、約2週間ほど代車として207を借りていたので、そのレビューのようなエントリーを書いてみる。
なお、比較対象としては、307sw、308HB(前期型AL4モデル)、308HB(後期型AT6モデル)を念頭においている。


■パッケージング
前席に2人で乗っている分には、窮屈な感じも無く、広すぎもせず。
このぐらいのサイズだと、取り回しの良さがちょうどいい。これは紛れもない事実だ。

ただし、縦の長さが足りない。
後席の余裕の無さは、ハッチバックということを差し引いてももう少し余裕が欲しいなぁ、と思う次第ではあるが、後席に人を載せるのは年に何回あるのかな?と考えると、これはこれでいいという気にもなってくる。

ハッチバックなので、ラッゲージスペースは当然のことながら狭い。
後席を倒した状態でMTBを寝かせて1台入れられるかどうかという程度の大きさなので、おいらのような使い方を考えるのであれば、ステーションワゴンモデルである207swでもかなり厳しいという感じだ。
とにかく、荷室の奥行きが足りない。
このニーズを満たすには、全長4500mm程度のステーションワゴンが適している事になるが、前車ビスタアルデオは5ナンバーなのに後席と荷室に余裕がある、すばらしいパッケージングだったなぁ、としみじみ回顧してしまう。

そんなわけで、307swのようにCセグメントにこだわる必要はないのだが、ワゴンとして荷室の長さを求めようとすると、Bセグメント(5ナンバーサイズワゴン)がほぼ壊滅の状況にあっては、結果としてCセグメントで探さなければならない状態がつらい。

って、話が逸れた。
目的が違うものを同列に並べちゃいかんな。


■居住性
全高は低くなったものの、頭上の圧迫感はほとんどない。
ドライビングポジションも悪くなく、少しシートを高めにセッティングすれば見切りもいい。

307swに比べればずいぶんと大きくなったインフォメーションディスプレイがダッシュボードに設置されている。
このディスプレイがけっこうなスペースを取っているため、ここにオンダッシュのPNDなどを設置しようとすると、インフォメーションディスプレイが見えなくなってしまう。
かといって、その他の部分は曲面構造のためナビのステーを取りつけるのに結構難儀してしまう。

では2DINスペースはどうなのだろうか?

207の2DINスペースはずいぶんと下に設置されており、視認性が非常に悪くなってしまう。

この部分の改善策はナビ男くんという選択肢があるものの、余計なコストが掛かるので本来であれば標準でもなんとかなるようにしてもらいたかった部分だ。

ちなみに、チルトアップ式のナビを2DIN上段に取り付けようとすると、エアコン吹き出し口の出っ張り(逆に言うと、2DINスペースが引っ込んでる)が干渉してしまって恐らく取り付けできないだろう。

理想的なポジションを確保するなら、やはりナビ男くんに頼るしかなさそうだ。


純正オーディオについても言及しておこう。
プジョー純正のオーディオは、ラジオとCD、そして前面にUSB端子を搭載した1DINユニットなのだが、この製品はカロッツェリアのOEM品のようだ。
このUSB端子にiPodを接続すると、iPodの画面にカロッツェリアのマークが出てきて、それ以降の操作はオーディオ側でしか操作が出来なくなってしまう。

オーディオ側でプレイリスト、アルバム、アーチスト単位での操作が一応はできるのだが、ディスプレイがドットマトリクスではなく14セグメントのため、表記が英文にしか対応しておらず、日本語表示は空白(何か選択されているはずだが、見えない)という事態になってしまい、使い勝手は非常に悪い。
USB接続は音声出力と充電だけしてくれればいいので、余計なことするな、と。
(これはプジョーが悪いのではなく、この手の中途半端なiPod連携を謳うカーオーディオ全てに言える話なのだが)

外部入力端子もあるようなので、そちらを使って操作はiPod本体で操作することをオススメする。

もうひとつ、ギャグのような装備が。
コンソール下部にカードを1枚入れるスペースが存在するのだが、これはETCではない。
ETCユニットを付けようとした場合は、別のモノ入れスペースを活用することになる。
ではこのカードを挿入する口はいったい何なのだろうか?

単なるカード入れということらしいのだが、こういうところ、金掛かってないなぁとガッカリさせられる部分だ。


■走行性
走らせてみてすぐに感じることは、物理的な重量が軽いなぁ、という点だ。
今まで乗ってた307swが1430kgなのに対して207が1170kgだから、軽く感じるのは当然ではあるが、とにかく物理的に軽いということは軽快に走れるということでもあるので、欧州コンパクトカーはやっぱりこうじゃなくちゃ、と強く感じさせる。

とはいえ、先代の206はもっと軽く軽快だったのだから、あそこまでヒットしたのもよくわかるというものだ。

ただし、この軽さはいくつかの演出が入っている。
それは、アクセルレスポンスに顕著に現れている。

207はBMWと共同開発した(とされる)1.6LのNAエンジンが搭載されているが、停止状態からアクセルペダルを軽く踏みこむと、ブワっと一気に加速する挙動を見せる。

初期型308も同じ系統でターボ付き1.6Lエンジンが搭載されているが、その時はここまで極端な挙動を見せなかった記憶があるので、207特有のセッティングなのかもしれない。

この、軽く踏むだけでも飛び出すようなアクセルレスポンスは国産車にありがちで、スタートダッシュを好む向きにはいいのかもしれないが、とにかく雑で下品な運転になりやすい。

この辺りの考察は後述する。

また、従来のプジョー海苔からするともっとも違和感を感じるのが、ステアリングが異様に軽いことだ。
電動パワーステアリング制御のため、こうしたセッティングになったのだろうが、とにかく軽すぎる。

車両自体の直進安定性は悪くないのだが、遊びが少なくクイックなハンドリングも相まって、とにかく不安感を感じる。特に街中での50km/hぐらいだとこの傾向が強く、フラフラとする。
逆にスピードが乗ってくると安定する。

2011年製造の後期モデルにも関わらずこの状態ということは、パワステの根本的なセッティングがどこかおかしいんじゃないかと思う。
もう少しうまく味付けできたんじゃないの?
308も同様にハンドルは軽めだが、ここまでではなかったと記憶している。
似たような時期に開発されながら、どうしてこうもセッティングが異なるんだろうか?


足回りについて。
若干固めだがそれはあまり気にならない。
4000kmしか走ってないのでサスペンション的には慣らしの時期ではあるが、十分仕事をしてくれる。

この足回りは旋回性の良さにも貢献している。
ある程度のスピードでコーナーに進入しても、きちんと踏ん張って曲がろうとしてくれる。
軽い車体と相まって、クルクルとワインディングを走るのは非常に楽しいクルマだ。

ただし、先ほど指摘したとおり、加速する、止まる、という部分がイマイチ。
バランスが悪いなぁ、という印象だ。


■パワートレインについて
上記のとおり、軽くアクセルを踏むだけでブワっと飛び出す挙動を見せる1.6LのNAエンジンとAL4のセッティングではあるが、その割に1500~2000回転ぐらいでトルクが薄くなる。
踏力を一定に保っていると、リニアな加速が得られず、結果としてアクセルペダルを踏み込むような運転になりがちで、こういう乗り方をすると燃費が極端に悪化する。

4速1800回転ぐらいでアクセルを一定の踏力で踏み続けて巡航している最中、勾配5%ぐらいの登り坂に差し掛かる。
こんなのはよくあるシチュエーションだ。
登りでスピードが落ちないようにアクセルを踏み込む。
しかし207は加速してくれない。
むしろジリジリと失速してくる。
仕方がなくシフトダウンして3速にするわけだが、この程度の坂で失速するクルマは初めてだ。
600ccエンジンのスマートでさえ、もっとトルクがあった。

・・・どこか壊れてるんじゃないか?
真剣にそう思ったぐらいだ。

この失速の原因はAL4にもある。
4段しかないギア、そしてそれが受け持つ領域。
贔屓目に見ても、これらのセッティングの煮詰めが甘すぎる。
特に坂道での失速は4速が受け持つ領域が広い割に、トルクがそれに着いてこないことが原因だ。
308のようにターボチャージャーがあれば、十分な低速トルクがあるので、1段あたりのギアでも広い領域をカバーできるが、NAでは荷が重過ぎたようだ。

単にカタログスペック上で不利だからということではなく、物理的にギア数が少ないということが実際に乗っていて不便を感じさせることが問題なのだ。

いい加減にこのユニット捨てろよ、ホント・・・


■燃費について
燃費は360kmほど走って、12.5km/L。
箱根の山まで往復では18km/Lまで伸びたものの、鶴川街道で4時間近く大渋滞にハマったことでかなりスポイルされたので平均するとこんな感じだろうか。
これでも10・15モード燃費よりはいい値が出ているので、やはりカタログ燃費以上の実力があるのは間違い無いのだが・・・

しかしアクセルワークにはかなり注意を払って乗った結果がこれだ。
このパワートレインの欠点を補おうとすると、必然的にアクセルを踏み込んで高い回転数で乗らなければならず、燃費はもっと悪くなるはずだ。

微妙なアクセルワークで燃費を稼ぐか、燃費を無視してストレスを減らすか。
好きな乗り方をすればいいが、どちらもおいらの性には合わない。


■総評
207に2週間乗ってみての総じての印象は、ガッカリというもの。
これだったら別にプジョーを選ぶ必要が無いなぁ、と。
一番のネガティブ要因は1.6NAエンジンとAL4であり、このセッティングがすべてを台無しにしている。
たとえば6速あったら、登りでの失速は4速または5速を使えば問題が無いわけであって。
現状では登りで3速に落とすと、回転数が上がって今度はうるさいというか下品という感じになる。
快適に乗ろうとすると、楽しく乗れない。
200万出して輸入車を買うことに満足感は見出しにくいと思う。

これだったら少し頑張って308のAL4モデルを買ったほうが、低速トルクが期待できる分まだマシというものだ。
(かといって308のAL4モデルも積極的にオススメはしたくないのだが)

そんなわけで、貴重な2週間の代車体験ではあったが、もう207はいいや・・・
207海苔の人が読んでたらごめんなさい。
感じたことを正直に書いたつもりなので、こういう意見もあるってことで軽く流して下さいな。


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