外堀が埋められつつあるプジョーさん


外堀が埋められつつあるプジョーさん。
マジでヤヴァいです。

仏大統領、プジョー削減容認せず 「国が介入」
【パリ共同】フランスのオランド大統領は14日、同国のテレビに出演、自動車大手プジョー・シトロエン・グループ(PSA)が発表した約8千人の人員削減計画は「受け入れられない」とし、国が介入して解決を図る方針を明らかにした。

 計画は見直しを迫られる可能性が出てきた。

 オランド大統領は、政権の最優先政策は雇用だと強調。10%を超えた失業率の低減に全力を尽くす考えを示した。

 PSAは12日、パリ郊外の工場閉鎖などで2014年までに国内の約8千人を削減する計画を発表していた。

 大統領は計画について「経営陣は(当時)人員削減の検討を否定していた」と不快感を表明した。
失業率の改善を公約として就任したばかりのオランド大統領にとっては、ここでビシッと指導力を発揮できないと、今後の政権運営に大きな痛手になることは明確なので、経済状況などを無視して過剰な介入を行う可能性があるわけです。

もちろん労働者の保護と国内産業の育成というのは国家戦略においては重要なファクターだけに、単に企業側の都合による大量解雇を牽制する動き自体は正しいと思うわけです。
とはいえ、民間企業の経営に政府がどこまで介入できるのか。

PSAの問題は商品競争力もさることながら、その高コスト体質にあるわけで、それをどのように改善していくかという点はやはり人件費を下げるということ以外になかなか打つ手は無いわけです。

無理にフランス国内の雇用を維持したが為の介入が、結果として企業そのものの存続の危機に直面する可能性も無くはないのです。

財源のアテも無いまま大盤振る舞いの公約をして、結局ほとんど実現できなかったどこかの国の無能政党と同じ轍を踏まなきゃいいんですけどね。

で、こんな話が出てくれば、当然のことながら市場における企業評価というのは急落するわけです。

プジョー株価が一時26年ぶり安値、再編計画でも業績懸念消えず

仏プジョー債、デフォルト確率51%示唆-CDS市場

CDSスプレッドの上昇はかなり敏感な企業評価の証とも言えるわけで、ここでリストラ(っていうか業績改善のための施策)をしっかり実行できないと・・・

市場からの評価をさらに下げる
    ↓
資金調達に支障が出る
    ↓
運転資金がショートする
    ↓
  あぼーん

なんて事にもなりかねないわけです。
それを回避するためのあれこれ施策を打っているわけですが、先日のGMとの資本提携もそのひとつでありまして。

当然期待されるのはGMとの協業によって最新技術(ハイブリッドやEVなど)の開発負担を軽減するということであるわけですが、さっそくオペルからクギを刺されてしまいました。
GMとプジョー、最先端技術は共有しない=オペル幹部
米自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)のドイツ子会社オペルの最高開発責任者リタ・フォルスト氏は12日、GMと仏PSAプジョー・シトロエンは先に包括提携で合意したが、GMの電気自動車(EV)「シボレー・ボルト」とプジョーの「3008ハイブリッド4」などの「グリーンカー」の最先端技術を両社が共有する公算は小さいとの見方を示した。

 業界の専門家は、オペル製「オペル・アンペラ」(米国での名称はボルト)のような車はそのブランドにとってリーダーシップと技術革新を示すために非常に重要な存在だと見ている。また、顧客はアンペラや3008ハイブリッドを店に見に来て、最終的に価格が手ごろな「オペル・アストラ」や「プジョー208」を購入するという傾向もあるため、アンペラなどはこうした車の需要を一段と押し上げるのにも役立っているという。
 フォルスト氏は「メーカーが他社と共有できないある種の技術的遺伝子というものがある」とし、こうした車の独自のセールスポイントは保護される必要があると説明した。
言ってる事はごもっとも・・・というところでありまして、さてそうなるとPSAとしては次世代環境対車をどのように開発していったらいいんでしょうか?


BMWからも三行半を突き付けられ大けがの出血を止めるためのリストラもフランス政府が許してくれない、となると・・・フランス政府から資本を入れられるか、もしくはPSA自身の身売りなんて話にもなりかねません。
この辺は先日から言い続けてる事ではありますが・・・

で、繰り返しますがPSAの問題点と解決策は

 ・高コスト体質⇒新興国へ生産シフト
 ・魅力的な車種が少ない⇒開発スピードアップ
 ・次世代環境技術の開発⇒自社開発を断念し外部調達するか、もう一度どこかとアライアンスを組み直す

とまぁ、やれることの選択肢はそんなに多くはないんですよね。

企業の合従連衡はひと段落してしまった感があるので、GMとの関係が深いものに出来ないのであればこれ以上の明るいビジョンを描くのは難しいわけで、そうするとやっぱり出血を止める手を打つぐらいしかないと思うんですが。

傘下の企業がそれなりに利益を出してるうちにドラスティックに動いていればこんなことにはならなかったと思うんですけどね。

さて、予断を許さない今回の話はどういった着地をするんでしょうか。
個人的にはフランス国内のリストラ規模を縮小させて実施、なんてあたりかと思いますが、それで何か状況が好転するとも思えませんが・・・

とはいいつつ、今回のこの動きって、そのまんま今後の日本でも起こりえる話なんですよね。

リストラの規模は先日話題にしたルネサス・エレクトロニクスの事例と酷似しているし。
ホンダのフィットアリアとかの例から始まって、日産はマーチや三菱はミラージュなど基幹車種の生産を海外へ移したりしており、これに追随する流れは必ず起こるわけです。

国内生産を続ける!とか言っていても部品の国産率はどんどん下がっており、16日に日産が発表した新型ノートなんかも生産は九州で行うものの、部品の4割近くが韓国を始めとしたアジア諸国からの調達になるなど、部品から生産まで国内で賄うというのがもはや不可能な話になっているわけでありまして。

日本の産業構造の行く末を占う上でも、今回のPSAの件がどう決着をつけるのか、注意深く見ておく必要があると思うわけですね。

まさしく、他人事じゃないんですよ。



この記事へのコメント


この記事へのトラックバック