【ディーゼルについて考える】企業のスタンス(3)


間が空いてしまったが、ディーゼルの話にいくつかの動きがあるようなので続きを上げときます。

高級車メーカーはイメージもひとつの商品であり、また販売台数における利益も多く取れることから、わざわざ日本独自の環境基準である「ポスト新長期規制」をクリアしてディーゼルのラインナップを増やすような戦略も取る事ができる。

それに対して、1台あたりの利益の少ない大衆車メーカーはどうかというと、ポスト新長期規制に対応させることが技術的に可能だったとしても、その対策費用が販管コストとして上乗せされるため、どうしても販売価格が高くならざるを得ないという状況がある。

それだけ高くしても確実に売れる(採算ラインに乗る)という見込みが立たなければ、なかなか国内でのディーゼル車販売へ参入することは難しい。

つまり、大衆車メーカーが日本市場にディーゼルを投入するためには、欧州仕様ほぼそのまま(今のガソリン車と同等の手間)で導入できるぐらいの前提が必要になるわけだ。

ここで、恐らくディーゼルに活路を見出さないと厳しい状況になりそうなフレンチ3メーカーを例にして考えてみよう。

フランスでは新車販売の7割、その他欧州各国でもディーゼル車を売りまくっているこれらのメーカーが、逆にガソリン車のパフォーマンスでVWに遅れを取っている現在、日本市場で存在感を発揮するためにはディーゼルの投入という選択肢は最後のチャンス(というか切り札)と言っていい状況にある。

特にPSAグループは3008 HYbrid4を昨年の東京モーターショーに持ち込んで導入をチラつかせたりしている。
(ディーゼルハイブリッドということもあり導入には二重の問題点があったりするのだが、それはまた別の話)

ルノーに関しても日経がトバし気味ではあるもののディーゼル導入の報道があった。

準備は進めていると考えて間違いは無い。
では、それがいつなのか?という話だ。
それが「2014」という前回の閉めに書いたキーワードに繋がってくる。


現在の欧州の環境基準である「EURO5」に比べて、日本の「ポスト新長期規制」が厳しすぎてそのままでは導入できない、というのが今までの状況だった。

これに対し、欧州では次の基準である「EURO6」が2014年より施行されることが決まっている。

EURO6とポスト新長期規制の内容はかなりの部分で似通っており、どちらかの基準をクリアしていれば、非常に少ない手間で互いの市場にディーゼル車を投入する事ができるようになる。

フレンチ3メーカーをはじめとして多くの欧州車メーカーがEURO6への対応を進めており、その準備が整えば、日本市場への参入は比較的容易になるということだ。

すなわち、この1、2年に登場する欧州車(新型、マイナーチェンジ含む)はほぼ

「EURO6対応≒日本市場への導入が容易」

と考えていい。

当BLOGへのコメントで教えてもらったのだが、プジョーが208のディーゼルを来年に導入、みたいな観測気球も上がったりする事から、そのタイミングは近いと見ていいだろう。

ここでCD協議会の話に戻る。

中の人が国内でディーゼル車の販売をしやすくするよう啓発活動を続けているのは、単にディーゼルが素晴らしいですよ、なんてことをアピールするだけではない。
当然のことながらCD協議会として国へのロビー活動も積極的に行っている、とのことだ。
EURO6がポスト新長期規制とほぼ同等の基準になっただけでは、いくら基準をクリアしやすくなるとはいえ、双方の市場で販売するために認可を得なくてはならない。

年間販売数千台規模のメーカーにとって、しかもどれぐらい売れるかわからないディーゼル車の認可を受けるためのコストとしては、これでも費用が掛かり過ぎる。

そこで想定されるのが、EURO6とポスト新長期規制双方の相互認可という方法だ。

欧州でEURO6をクリアした車両は、ポスト新長期規制の認可を受けずとも、基準をクリアしているものとして特別な手続きを必要とせずに販売できるようにする、という考え方。

その逆も然り。

CD協議会の中の人は、この方法によって欧州車メーカーが国内でディーゼルを販売するハードルがグンと下がるので、積極的に働きかけていると言っていた。

これが実現すれば、フレンチ3メーカーなど大衆車メーカーはEURO6をクリアしていれば、ガソリン車と同様の手続きで国内でもディーゼル車の販売が可能になる。

こうなって初めて現実的な話になってくるということだ。

2014年というのは、そういうターニングポイントになる年だということだ。

また、2014年を待たずとも、相互認可など導入の手間が軽減されれば、報道にあるように2013年中に新たな展開を迎える事も十分ありえる話だ。

日産や三菱、メルセデスやBMWがといった散発的な花火から、マツダがSKYACTIV-Dでドーンとでかい打ち上げ花火を上げた。
日経がこんな日和見記事を書くぐらいだから、国内のディーゼル市場は温まったと考えていい。

あとは、さまざまなプレイヤーが魅力的な車種を投入することで、市場を盛り上げていけるかどうか。

特に欧州の大衆車メーカーにとっては日本でシェアを拡大するラストチャンスが巡ってきたことになる。
このビッグウェーブに乗るか、一定の距離を置いて無理をせずビジネスするか。
各社の判断と戦略に期待していくことにしよう。
 
 

この記事へのコメント

  • 海鮮丼太郎


    あ・・・
    記事読んでたのに見事に見落としてました。
    確かにそう書いてますね。
    情報ありがとうございます。

    ただ、記事書いてるのが大西康之氏であって、この人トバシ記事書くので有名なんですよw

    この記事も手のひら返したようにディーゼル礼賛したりとかなりアレな感じでありまして。

    信ぴょう性についてはあんまし期待できないですね。

    2012年07月03日 15:46

この記事へのトラックバック