試乗会の順番待ちの間にCD協議会の中の人に話を聞くことができたんだが、これがけっこう面白かった。
まずは自動車メーカーがCD協議会のような団体に正式加入するのは大変らしい、というお話。
CD協議会を発足する際、正会員を集めるためにかなりいろんなメーカーを回ったんだそうだ。
そこで見えてきたのは、企業のディーゼルに対するスタンス(というか温度差)がけっこうバラバラだったりして、なかなか賛同を集めるのに苦労をしたとのことだった。
たとえば。
あくまで仮の話ね。
ハイブリッドを強く推進するトヨタがCD協議会に加入したとする。
その情報が出回ることで、「トヨタはハイブリッド偏重から方針転換するのか?」とか、いろんな憶測を呼ぶことになる。
つまり、こうした協議会の加盟というのは、企業がどういう方向で事業を進めようとしているかの暗黙のメッセージのような役割を果たすことになる。
ご存知のとおりトヨタは次世代のクルマに関してはハイブリッドを基本戦略としてPHEV、FCVへと舵を切っており、海外においてもディーゼルが圧倒的な欧州市場向けには自前ではなくBMWからディーゼルエンジンの供給を受けてビジネスをする、という選択をしている。
ここでその是非を問うつもりはない。
要は、トヨタは企業としてそういう戦略を取っている、ということだ。
だから、CD協議会のような団体には例え興味があったとしても加入しない、ということになる。
(もしくは、ディーゼル参入の計画があってもそれを他社に知られないために加入しないという戦略もありえるが)
当然市場調査はやっているが、ディーゼルの存在は無視していいという判断のようだ。
会社の方向性が明確な場合はわかりやすい。
では日産や三菱自動車の場合はどうなんだろうか?
今回の試乗会にもX-TRAILのディーゼルを用意している日産は、ディーゼル普及=X-TRAILの販売増という目論見を描くことができる。
しかし、CD協議会の正会員としては名前を連ねていない。
どうしてなんだろうか?
日産と言えば環境性能のアピールとしてEVのLEAFを前面に出して「ZERO EMISSION」を掲げている。
環境のためとか言いながら、実は富の再分配のカモフラージュだったことが明らかになって下火になりつつあるCO2排出権取引ビジネスにも積極的に仕掛けるなど、会社の方向性としてはやはり電気の方向を向いている。
トヨタと同じく日産もイメージを重視する会社であり、前者を挙げて「ZERO EMISSION」へと向いている現在では、過渡期の技術としてのディーゼルに対して最低限の手間は掛けるものの、会社として普及のバックアップを積極的に行うつもりがないため、CD協議会のような普及団体への積極的な参加は控えているらしい。
実はこの点についてはおいらも2009年のモーターショーでも感じていた。
当時こんなエントリーを書いている。
■日産華々しくLEAFを披露している中で、ディーゼルの担当者が会社からあまり支援してもらえないことを嘆いていた。
日産はゼロエミッションを声高に叫んでいたが、その隅っこのほうにディーゼル担当者が不満げな顔をしてたのが印象的だった。
マツダと日産は欧州に対抗できるディーゼル技術がある。
それを潰すのは消費者の無理解といびつな宣伝戦略だ。
とにかくこのディーゼルを国内市場に出したいので、消費者から要望を出してほしいと切実な感じて答えてくれたことを思い出した。
確かにポスト新長期規制をクリアした第一号としてX-TRAILのディーゼルを国内に投入してくれたものの、あまり積極的に宣伝をしてもらえていない感じを受ける。
しかも、X-TRAIL以外の車種にディーゼル搭載が広がる感じも見受けられず、SUVらしさを演出するためにディーゼルを用意しました、といった割と消極的展開に思えてならない。
CD協議会に加盟しないのも、そんな理由からなのではないかと思ってしまう。
三菱自動車も同様とのこと。
変則的に発売したパジェロディーゼルもあまり力が入っておらず、会社としてはiMiEVに次世代クリーン自動車のイメージを担わせている関係で、ディーゼルに注力する体力が無いのかもしれない。
三菱自動車は明日のことを語る前に日銭をどうにかした方がいいと思うのだが、国内のディーゼルを取り巻く状況が変わらない限り、率先して対応するつもりはないのかもね。
中の人に話を聞いてて、あぁやっぱりと思ったのがホンダ。
CD協議会の人が挨拶に行っても、けんもほろろな対応だったとか。
ホンダと言えば、小型車はハイブリッド、中大型車はディーゼルという方針を転換して、ハイブリッド一辺倒の戦略を採ったわけだが、ご存知のとおりインサイトがプリウスに完膚なきまでに叩きつぶされ、その後もヒット車が出せずに長い低迷に喘いでいる。
「負けるもんか。」
などと言いつつ、じゃあ会社としてどう頑張るつもりなのか一向に見えてこないホンダの硬直した感じを象徴するような話だなぁと思った。
対応したのが広報かマーケか知らんけど、考えてることって態度に出るのよね。
こういうところからも、ホンダの復活の日はまだまだ遠いんじゃないかと思う次第也。
国産メーカーの話はこのぐらいにしておいて。
じゃあ海外メーカーはどうなのよ?という話は次のエントリーで。。
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