【ディーゼルについて考える】ディーゼル車って何だ?


先週末に、クリーンディーゼル普及促進協議会(以下CD協議会)が開催した『クリーンディーゼル実車体験試乗会』に行ってきた、なんて話はすでに書いた。
今回はそのつづきのお話。

(なお、以下に記載するディーゼル車という記述は特に言及の無い限り次世代クリーンディーゼル車のことを指す。)

CD協議会は、国内において普及がなかなか進まないディーゼル車の普及を目的として、昨年6月に設立された組織であり、正会員に名を連ねているのは、


 マツダ
 メルセデスベンツ日本
 ボッシュ
 デンソー
 全国ディーゼルポンプ振興会連合会

の4社+1団体だったりする。

デンソーとボッシュはディーゼルに関する多くの技術を持っている、ディーゼル関連におて強い影響力を持つ会社だ。
コモンレールディーゼルで激しい競争を繰り広げている両社ではあるが、ディーゼルを普及させるという目的は一緒であり、またお互いへのリスペクトもあるんだろう。
仲良く名前を連ねている、っていうか連ねておかないとヤバいということなのかもしれないが。

これに対して自動車メーカーは、意外にもディーゼル車をラインナップしているBMWや日産、三菱自動車の名前が無い。

これには少々カラクリがあるようなので、後述することにする。
とにかく、現時点ではこの5社で運営されている組織となっている。

現時点における国内のディーゼル普及率は1割にも満たない状況だ。
特にポスト新長期規制と呼ばれる世界でトップレベルに厳しい環境規制を敷いているため、これをクリアするためのコストが障害となって、国内メーカーはおろかクリーンディーゼル車のラインナップを多く持つ欧州メーカーでさえディーゼル車を発売する事にあまり積極的ではない。

なぜか?

理由はいろいろあるのだが、ここでディーゼル車のポジションというものを簡単に確認しておこう。

旧来のディーゼルが環境に悪影響を与える存在であったということは事実ではあるものの、世界的に厳しくなりつつある環境基準に対応すべく、90年代後半からずいぶんと技術が進化している。

ガソリン車よりも優れ、むしろハイブリッド車に迫る環境性能を実現しているという事実が、実はあまり知られていないというところにディーゼル車の置かれている状況が垣間見える。

細かい話はCD協議会のWEBページに非常にわかりやすく記載されているので、まずは目を通してみるといいだろう。

で、ディーゼルを手放しで称賛するつもりはないので、従来のガソリン車、日本でバカみたいに売れているガソリンハイブリッド車とを含めて簡単に位置関係を説明するとこうなる。


  ガソリン車 ディーゼル車 ガソリン
ハイブリッド車
EV
環境性能
燃料価格
走行距離
加速性能
運転性能
車両価格
補助金
あくまで一般的は車種の傾向を表しています。
※ガソリン車に△が多いのは「これが基準になるから」、という意味です。


つまり、ディーゼル車というのは、

 ・それなりに環境性能に優れている
 ・燃料価格がガソリンに比べて安く、燃費がいい
 ・加速性能に優れ、運転していて楽しいが
 ・ハイブリッド車と同等の価格でガソリン車に比べると割高
 ・でも補助金はいっぱいもらえるよ


という存在なわけだ。

先日発売されたマツダCX-5のガソリン車(20S)とディーゼル車(XD)の価格差は38万円。
燃費はガソリン車(20S)が16.0km/L、ディーゼル車(XD)が18.6km/Lということになる。
6/13現在の全国平均は、ガソリンが139.8円/L、軽油が120.8円/Lなので燃料の価格差は18円/Lとなる。
これを基準で計算すると、燃料費においてディーゼル車がガソリン車との価格差を吸収するには17万km走る必要がある

これはあくまで今の燃料費がこのまま続いたら、といシミュレーションであって、軽油との価格差がひと昔前のように30円/Lぐらいになると、13.4万kmぐらいで逆転することになる。

同様のシミュレーションをハイブリッド車でやってみる。

フィットのガソリン車(13Gスマートセレクション)は燃費が21.0km/L。対するハイブリッド車(HYBRIDスマートセレクション)は26.4km/Lとなり、フィット両者の価格差は36万円。

どちらもガソリンを使うということで燃料費はイコールとなり、給油の回数が少なくなる分FITハイブリッドの方が有利となる。
とはいえ、ハイブリッドがガソリン車との価格差を逆転するには26.5万kmも走らなくてはならないことになる。

もちろんこれは単純に車両価格での比較だ。
これらの差を埋めるために政策として補助金の支給や減税が実施されているわけであって、正確な維持コストはケースバイケースになってくる。
また、燃料価格はここ数年間で大乱高下しているのはご存じのとおりであり、今後もどうなるかはまったく予測が付かない。(上がることはあっても下がる要因はあまり無いわけだが…)

そう考えると、コストメリットを期待してハイブリッドを選ぶこともディーゼルを選ぶことも、あまり得策とは言えない。
特に走行距離が短いユーザーにとっては、その傾向が顕著になる。

単なる雰囲気ではない部分の魅力に目を向けることが必要なのではないか、ということだ。
 

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック