バカコラボをはじめとした大量の宣伝によって無理やり話題作りがされている感が否めない映画「テルマエ・ロマエ」でありますが、エンターブレインの作品ということもあって電子書籍としてもけっこうな勢いで売れており、我々もこうしたマイナーな作品が日の目を見て映画化されると聞くと、仕事で取引があるからとかそんな理由を抜きにしてうれしくもなったりするわけです。
残念ながら試写会のチケットは社内の女性陣に強奪されてしまったのでおいらは事前に観る機会がなかったわけですが、せっかくGWも後半が始まることだし、ここで怠惰な前半の反省を込めて、会社終わってからレイトショーへと出かけることにしたわけですよ。
もちろん嫁を連れて。
で、テルマエ・ロマエなんですが、例によって鉄壁のフジテレビドラマ制作陣が手がけたというのがかなり地雷臭を漂わせていたわけですが、結論から先に書くと、
「ふつうに楽しめた。」
でありました。
これは爆笑することは無かったものの、失笑や席を立ちたくなるほどの気恥ずかしさというのが無かったことに対する安堵感のようなものでありまして、“この出来で踏み止まってくれて本当に良かった”という思いからくるものであります。
過去のフジテレビ関連映画からすれば、これでもかなり良くできた内容だと思いましたとさ。
で、この及第点を与えた要素は何だったんだろう?と考えたところ、ローマで撮影したというセットの豪華さと、肝心の風呂場のセットが良くできていたから、という事なんじゃないかと思いました。
このローマのセットは、海外ドラマ『ROME』のセットをそのまま利用させてもらったので、日本映画にしては妙にリアルなローマのシーンが撮影できたという事なんだそうです。
これは素直によく頑張ったな、と思います。
日本でセットを組んだり、CG合成しようとしても、日本の技術と予算ではどうしようもなくショボい映像しか作れなかったであろうことを考えると、こうして海外ドラマのセットを借りる交渉をしたことは非常に賢明だと思うし、映画にもそれが大きくプラスに働いておりました。
このローマのシーンにある程度の説得力を持たせられたからこそ、日本の銭湯との対比というところの面白さが演出できたんじゃないかと思う次第であります。
また、原作コミックが持つ細かな薀蓄を映画という表現にそこそこ上手に活かせていたんじゃないかと思います。
ルシウスの心情表現が多すぎるとの批判もあるようですが、体裁としてはどうしてもあのスタイルをとらざるをえないと思いますし、賛否両論がある【BILINGUAL】や、漫画的表現のキャプションなんかも、原作コミック好きにはいいサービスになっていると思います。
タイムリープシーンの演出なんかは、小技を使ったギャグやパロディを揃えることで、行ったりきたりの部分の退屈さを最低限に抑えられたと思います。
ストーリーは日本の銭湯を始めとしたお風呂文化を持ち帰ってローマで再現する、というのが何度か繰り返された後、古代ローマの皇帝を巡る争いみたいな話が展開していくわけですが、そこからの展開はもう少し脚本の練り方があっただろう、という気がしなくもありません。
ただし、テルマエ・ロマエは元々がB級ギャグ作品のようなものでありまして、変に大作ぶらずにB級映画として手堅くまとめたというところに意義があると思います。
これを世界に向けて「Cool Japan!」とか言い出したら目も当てられなかっただろうと思います。
そして、映画版テルマエ・ロマエの一番評価するポイントとしては・・・
「上戸彩の恋愛話にならなくて本当に良かった!」
であります。
ほとんどネタバレになっちまってますが、上戸彩の役は原作にはない映画版オリジナルキャラということなわけですが、ルシウスのタイムリープはなぜかこの上戸彩周辺に発生する、という流れがあるわけです。
必然的にルシウスと上戸彩が恋愛関係になる展開、というのがフジテレビ流脚色の王道だったりするわけで、もしそんな展開になるようであればおいらは怒りに震えながら席を立って出て行ってやろうと思っておりました。
しかし、上戸彩が一方的に行為を寄せる展開はあるものの、そうしたシーンは最低限に抑えられ、現代と古代ローマの間をつなぐストーリーテラーの役割で抑えられております。
人気タレントを使うことで話題を喚起するという目的で上戸彩のキャスティングが決まったであろうことは想像がつくものの、この程度の描写にしてくれたおかげで原作の良い点と映画として脚色のバランスがギリギリ許されるところで成立していると思いましたですよ。
繰り返しになりますが、こんな感じで“フジテレビ映画にありがちな最悪の展開が回避された”ことが、とにかくうれしく思います。
場内はそれなりに笑いが出ておりましたが、個人的に爆笑するほどのシーンはひとつもありませんでした。
でも、クスリと笑わされる箇所はいくつもあり、テルマエ・ロマエというトンデモ原作をここまでの映像で見せてくれたことで、それなりに満足感を感じて劇場を後にしました。
でも、本当に欲を言うなら、上戸彩はいらなかったんじゃないかなぁ…とも思いますが。
また、この題材であればもう少し練り込んで、作品としての質を高めることが出来たんじゃないかとも思います。その意味で、惜しい作品であるとも思います。
それでも万人に薦めても、少なくとも恨みを買うことは無いであろうという映画として、それなりにオススメであります。
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