こんな記事を見かけた。
「外車シェア 最高の9.6%」
2011年度の国内の輸入車販売台数は29万5149台と、前年度に比べて22・9%の大幅増となった。
国内新車販売(軽自動車を除く)に占めるシェア(占有率)は9・6%と、前年度を1・5ポイント上回り過去最高だった。日本自動車輸入組合が5日発表した。
記事の内容に関しては、まぁ大筋で間違ったことは言っていないのだが、この9.6%という数字の根拠については少し説明が必要になるだろう。
輸入車については日本自動車輸入組合(JAIA)が毎月登録状況を公表しており、それが根拠になるわけだが、この輸入車という定義が誤解を受けやすいものになっている。
一般的には、
輸入車=海外メーカーのクルマ
国産車=国内メーカーのクルマ
という認識だと思われるが、JAIAの発表する輸入車の登録状況は、昨今数が増えつつある国内メーカーの海外生産分についても輸入車の数値としてカウントしている。
トヨタのタウンエースや日産のマーチ、スズキのスプラッシュや古くはGMグループだった頃にスバルがオペルのザフィーラをトラヴィックとしてOEM販売していた時も、輸入車としてカウントされていたりするわけだ。
つまり、JAIAが発表する数値はいわば水増しされた数字であることは、意外と知られていない。
輸入車(日本メーカーの海外生産分含む)の国内シェア | ||
2011年度 | 2010年度 | |
輸入車合計登録台数 | 295149 | 240178 |
国内登録台数 | 3064336 | 2972348 |
輸入車シェア | 9.6% | 8.1% |
これが今回の「外車シェアが過去最高の9.6%」という見出しの根拠なわけだが、中身を見ればなんのことはない。日産マーチのような量販車種の海外生産分の輸入が増えたからという話になるわけだ。
海外メーカーだけに絞って数字を出すと、こういうことになる。
海外メーカーの国内シェア | ||
2011年度 | 2010年度 | |
海外メーカー登録台数 | 223272 | 182829 |
国内登録台数 | 3064336 | 2972348 |
海外メーカーシェア | 7.3% | 6.2% |
国内登録車に対するシェアは、7.3%ということで、確かに前年より+0.9%と大幅に伸びているが、記事の見出しにするほど大きなトピックにはなり得ない。
読売新聞としてはJAIAが発表した内容を元に記事を書いたんだろうから、全責任があるとは言えないが、結果としてこの見出しは誇張だ。
しかし、その誇張を促すような恣意的なデータを出しているJAIAの方にこそ問題がある。
JAIAとしては、輸入車の実績が増えることが組織としての成果になるので、いろんな理由を付けて数値を水増ししたくなったんだろうが、実態として必要とされるデータは、国内メーカーのクルマと海外メーカーのクルマが市場でそれぞれどのぐらいのシェアを持っているか、ということであり、きちんとJAIAの数値を精査しないとそのデータが取れないのであれば意味はない。
速報資料には一応国内メーカーと海外メーカーの数字が併記されているので、総評の書き方の問題と言える。
とはいいつつ、海外への工場移転などが進み、日産マーチや今度出る三菱ミラージュのように量販車種を海外生産する流れが出来つつある状況において、国内メーカーとは何か?という定義が曖昧になりつつある。
(この場合、日本国内に本社を置くメーカーと言うべきか)
海外生産車が増え、国内生産車の登録が減少すれば、当然国内の雇用といった面にも影響は出てくるわけで、そういったことの分析のためにもきちんとしたデータを把握しておくことは重要だが、そのためにもJAIAはまずきちんと海外メーカーと国内メーカーの数字を分けて集計、発表することを求めたい。
こんなこと、素人に言われなくたってわかってんでしょ?ホントは。
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