PSAとGMが具体的なプロジェクト立ち上げへ

208
プジョー、GMとプロジェクト5件を立ち上げ
自動車大手PSAプジョー・シトロエンは23日、米ゼネラルモーターズ(GM)との包括的提携に伴い、かねて単独で進めていた2件のプロジェクトを延期すると発表した。同時に、GMと5件の新規プロジェクトを立ち上げるとしている。

プジョーは仏北部バランシエンヌ工場で製造予定だったデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)のプロセスエンジニアリング・プロジェクトを7カ月延期。これを受け、GMと共同でよりコスト効率の高い形でのDCTギアボックス開発に取り組む意向だ。また、スペインのマドリード工場で製造予定のCセグメント車プロジェクトも、引き続き凍結する。

同社はDCTギアボックス開発に加え、GMとともに大型セダンとコンパクト車それぞれの共通プラットフォーム、小型低排出車の共通プラットフォーム、新興市場向け小型車の開発プロジェクトに着手する。ダウ・ジョーンズによると、これらのプロジェクトは今年10月までに立ち上げる予定。

両社は先月、包括的提携を結び、GMがPSAに7%出資すると発表。PSAは10億ユーロに上る株主割当増資を行い、これをGMが引き受けることになっている。両社の提携機関は10年間で、この間に20億ドルのコスト削減を目指す。両社は今回の共同プロジェクト発表により、提携の内容が単なる共同調達にとどまらないことを投資家にアピールした形だ。
当初報道されていた資本提携によるプラットフォームの共用化については、両者とも次世代車プロジェクトがかなり進行してしまっており、オペルはBセグメント以下はGMグループの韓国GMが開発したプラットフォームを流用する方向ですでに進行、プジョーも208をローンチする段階にあって、提携の効果を疑問視する声が多いというのは、投資判断引き下げなど市場関係者の評価が必ずしも芳しくないことからもわかる話だ。

しかし、DCTギアボックスの共同開発といった提携であれば、プラットフォームに比べれば影響も少なく、かつ方針転換もしやすい。

PSAグループは明らかに優れたトランスミッションをラインナップに持っていないことがボトルネックになっている。

欧州ではMT需要が圧倒的ではあるものの、それと同じく重要性が増している自動変速ギアボックスについては十分な対策ができていない。
その煽りを食って、日本においては旧式の4速ATであるAL4(後に改良版のAT8)が投入され、メディアからも消費者からも総スカンを食って、407で一部採用していたアイシンAW製の6速ATの新型AT6(中身はアイシンAWのTF-70SC)を308のランニングチェンジで慌てて投入したりした。
その割に、ランク的には少し上質なクラスになるシトロエンではAT6は搭載しないなど、まったくもってチグハグというか意味不明な状況が続いている。

で、PSAにおけるトランスミッションは現在のところマニュアルが自社製5MTと6MT。
それに対してオートマチックがシトロエンで使用されている自社製6速EGSと旧来のAL4改良版であるAT8、308と3008、508で限定的に採用されているアイシンAW製のAT6という3種類が存在するわけだが、こんなことやってればコスト効率は極めて悪くなるし、それぞれのトランスミッションの評価もあまり芳しいものではない。
(AT6は性能としては及第点だが、他社を圧倒するほどの性能ではない)

他社との競争力を維持しつつコスト効率を高めるためには、やはり時代的にもPSAという欧州市場を中心に事業を展開している会社としても、DCT(DualClutchTransmission)をラインナップしておくことは重要だということになる。

しかし、PSAのDCT開発については数年前から噂が出ており、技術的にもある程度のメドが立っていたはずだ。
しかしそれを延期してまでGMとの共同開発に路線を修正するというのは、コストメリットはあってもタイミングとしてはあまり良いものではないという気がする。

これで日本に導入される208はほぼAT8(悪い冗談でAL4かもしれない)になるのではないかということになり、PCJの人々が頭を抱える事態になりそうだ。207の悪夢、再び。

現時点でDCTの話がこの状態ということになると、おそらく市販車への搭載は208のマイナーチェンジもしくは308の後継である301に間に合うかどうか、というタイミングになるかと思われ、嫌な予感がしないでもない。

それと、マドリッド工場で生産予定のCセグメント車の開発も凍結というのがちょっと気になる。
マドリッド工場では今までBセグメントを製造してたと記憶してるが、果たして何の話だろう?

開発中のプロジェクトでシトロエンCセグメントとしてはC4ピカソ系と、プジョーのCセグメントは言わずと知れた308の後継車である301系(および5008後継車)の可能性があるだけに、詳細は続報を待ちたいところだ。

ただ、提携のニュースが流れた時にMPV系の共同開発なんて話が出てたことからすると、5008後継車かC4ピカソあたりの可能性が高いかもしれない。

そんなわけで、本件も含めたGMとPSAの5つのプロジェクトは以下の通り。

 1:共有プラットフォームによる大型セダンの可能性の検討
 2:共有プラットフォームによるコンパクトMPVセグメントの可能性の検討
 3:ラテンアメリカ市場向けコンパクトカーの可能性の検討
 4:低Co2排出を目的としたスモールカープラットフォームの共同開発
 5:DCTの共同開発によるコスト削減


成果としてはDCTが一番先に出てくることになるだろうが、新型車開発であればやはり4年ほど先を想定しなければならなくなるので、ただでさえ車種の取り揃えに難があるPSAがその間どうやって食っていくのだろう?と少し心配になる話でありましたとさ。

PSAから出されたプレスリリースは下記の通り。
 
Press release
  
Paris - 03/23/2012

European Works Council Meeting of 23 March 2012

At this morning's meeting of the
European Works Council, management presented the Group's 2011 financial
results and discussed the alliance with General Motors announced last 29
February.

As part of the €1 billion cost-reduction plan designed to help restore the Automotive Division's financial situation, management
indicated that certain development projects have been postponed, in
line with the need to prioritise capital expenditure commitments. In
particular
:

- Process engineering for the dual-clutch transmission, to be
manufactured at the Valenciennes plant, has been pushed back seven
months. During this period, other, more cost-effective pathways will be
explored, in particular through the GM Alliance, to provide the Group
with this type of gearbox.

- The C-segment vehicle project planned for the Madrid plant remains suspended.


The recent periods of short-time work in Group plants were necessary to bring inventory under control, at a time when the European market has fallen by 9% since the beginning of the year.

Management also announced the launch of five working groups as part of the alliance with GM:

- Two groups are studying the feasibility of developments on shared platforms in the large sedan and roomy compact segments.

- One group is working on a small car programme for emerging markets, with a possible initial application in Latin America.

- One group is looking at a programme to co-develop a low-carbon small car platform.

- And lastly, one group is working on the DCT gearbox programme suspended as part of the 2012 cost reduction plan.

Management indicated that it was important to maintain balance in all of
the projects that could come out of these working groups, so that they
are a source of progress for both partners.

Employee representatives will be informed and consulted when the working groups have issued their conclusions.

The Research and Development teams concerned may have to change
assignments, but the total number of R&D staff will remain unchanged

Concerning the consequences of FIAT's withdrawal from the Sevelnord
plant in around 2017, management indicated that the following points
would have to be addressed:

- Clarifying beforehand the terms and conditions of FIAT's withdrawal, to as to be free to act as early as possible.

- Finding a new partner.

- Continuing to work on the plant's competitiveness.

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