auはどうしてしまったんだろう?

 
 
“Andoridのau”から、“自由に選べるau”ってことで、スマートフォンに関しては国内モデル、海外モデルのAndroidスマートフォン、誰得感の否めないWindowsPhone7、そして待望のiPhoneを手に入れ、3キャリアの中でもauはずいぶんと頑張っている印象を受けるわけです。

で、実質的にはAndroidを主軸としてビジネスが回り始めており、コンテンツの市場も従来のezwebからの受け皿サイトがau oneのメニューリストに続々とオープンして、主要な電子書店もそちらに軸足を移しつつあります。

売上の規模で言えばまだまでですけど、着実に毎月数字を伸ばしているのは結構なことだと思います。

で、ガラケーからAndroidという新天地を得て、そこでどんなビジネスを展開するかというのは、市場環境がリセットされて「よーいドン!」の再スタートとなったわけで、モバゲーやGREEといったSNSゲーを始めとした勢力と並行して、電子書籍のように従来型の課金市場を伸ばすべく、みんな懸命に種を植え、水をやり、育てている最中だったりするわけです。


で、そういったビジネスを支援するのがキャリアの務めなわけでありますが、昨今のキャリアは単に各事業者から売上をピンハネするだけでは飽き足らず、自ら直営サービスに乗り出して、ユーザからあの手この手で課金を促すようになってきました。

まぁ、競争原理が正しく働いているという考え方と、ユーザからすればキャリア直営サービスであれば何かと便利だろうという安心感があるかと思うので、一概にそれを否定するつもりはありません。
ユーザの好みに応じて好きな方を選ばいいということであります。

例えるならば、たまプラーザ駅のように駅ビルでなんでも揃ってしまうような街と、下北沢駅のように駅周辺の雑多に店がある街と、どちらの方が好みか?みたいな話でありまして。

この辺りは店の構え方の話であって、立地と品揃えと陳列の勝負という点である意味フェアな戦いではありました。


さて、キャリアとして直営のサービスを収入の柱に育てたいという意向とともに、もうひとつ大きな柱として注目されるのが、広告収入というやつであります。

公式ページやメニューリスト(各事業者のサービスをカテゴライズして表示するリスト)のページなどにバナー広告枠を設置して、そこに高値をつける事ですんごい額の収入を得ることができるわけです。

もちろんそれだけ高値でも広告が埋まるのは、それを見て、クリックする人が多いということであり、広告主にとってそのお金を払うだけの効果が見込めるから、ということでもありますが。


ある意味広告収入というのは禁断の果実でありまして、放っておいても勝手にお金が入ってくることもあり、できるだけ多くの広告枠を作りたいという欲望がどうしても湧き上がってくるんですね。

モバゲーやGREEなどの無料ゲームなどでやたらと広告が出てくるのは、そういうところで費用を回収しているからなので、そのあたりは無料とのトレードオフとして消費者もある程度は受け入れなければいけない、それが嫌なら利用しないというスタンスであるべきかと思います。

しかし、お金を取ってサービスを提供している通信キャリアが、率先して広告配信にご熱心になるのはいかがなものか、という事例が発生しておりまして。


Android端末の画面上部に通知領域と呼ばれる場所があって、ユーザの設定に応じてそこに必要な通知が表示される仕組みがあるんですが、ある日突然ここに広告が表示されるようになったらどんな気がするでしょう?

難しい説明は省きますけど、あの手この手の広告表示に関するテクノロジーの中で、特に評判の悪いairpushという仕組みが議論を巻き起こしております。


airpushのテクノロジー自体は以前から話題になっており、アプリに紛れてこっそりインストールさせて、勝手に通知領域に広告を表示する手法については賛否否否否ぐらいの感じで議論が交わされておりました。

無料アプリの中には開発費を回収するためにairpushの仕組みを導入するケースも増えてきて、ユーザの間では急に広告が表示されるようになって気持ち悪い、といった拒否反応も出たりしております。

しかしまぁ、これはわからなくもないんですよね。

無料アプリの対価としてairpushによる広告表示を受け入れてるか、それが嫌なら使わないという選択をすればいいのだから。

しかし、これを通信キャリア自身が展開してきたらどうなるのか?

auはこの禁断の果実に手を出してしまいました。

auのAndroid端末には、Androidマーケットとは別に、アプリの内容をきちんと審査して、お墨付きを与えたアプリだけを安心して購入できる独自のマーケットとして、au one Marketという仕組みを用意しています。

iPhoneアプリと違ってAndroidマーケットは実質的に審査を受けずに登録することができるため、アプリによっては端末内の情報を抜き出したりするような悪質なアプリも並んでいることが多いため、免疫力の無いユーザがau one Marketのような安心できるマーケットでアプリを選ぶということができることは、キャリアのサービスとして非常に志の高い取り組みだと、理念そのものは非常に支持しておりました。

そのau one Marketへのアクセスを容易にするアプリを、auは各Android端末にプリインストールして出荷していますが、最近このアプリのバージョンアップ版に上記のairpushが埋め込まれていることが発覚して、騒ぎになっております。

何が起こっているのかは、このまとめをチェックすれば大体のことは理解できるかと思います。

au one Marketのアプリをアップデートするにあたって、広告配信の許諾を得ているか?という点については手元のIS03がエラーを出しまくって手元で確認が取れていないのですが、まさかキャリア自身のアプリでこんなことやられるとは思っても居なかった多くのユーザが、愕然として不満をぶちまけております。

そこに我らが高木浩光せんせぇも参戦して、問題点の指摘で方々に火を放っております。

auっていうかKDDIは昔から“隙あらば広告”といった展開にご熱心でありまして。

ただ、踏み越えてはいけない一線というのはあると思うんですね。

Android端末の通知領域というのは、あくまでユーザ自身のためのインフォメーションが表示されるエリアであって、ここに他者が土足で踏み込んでくると心理的な嫌悪感を抱くのは当然の反応かと思います。

また、この広告を停めさせるには、(現時点では)auに電話して解除を申し出ないといけないらしい、とのこと。

ターゲティング情報配信の停止について

WEBサイトやアプリの中に広告が表示されるのは、従来のガラケーでもあった仕組みなので、この辺りについてはAndroidについてはコンセンサスも得られやすいかと思いますが、端末内のUI部分については手をつけてはダメだと思うんですよ。

また、この通知領域へのプッシュ配信による広告は、不必要なパケット通信を発生させ、バッテリーに余計な電力消費をもたらします。

これで得られる、ユーザメリットって一体何なんでしょうかね?

誰かがツイートしてたけど、

「目の前の10円を拾うためにその先にある1000円をフイにしている」

という表現が一番的確に今回の事態を言い表していると思いますよ。


Androidでの電子書籍の売上はぼちぼち上向き始めてきてるんですよね。
モバゲーやGREEの売上も好調らしいし、せっかく力を入れるんだったら、コンテンツ市場が活性化するような方策取ってくださいよ。
もっとハッキリ言えば、コンテンツを売るの邪魔しないでくださいよ。

広告は手段であって目的じゃないでしょ。
簡単に儲けられるからといって、いつの間にやら広告がメインでコンテンツのことがおざなりになっている気がして非常に不愉快です。

完全にこの辺を勘違いしているauを、諸手を挙げて支持する気にはなれません。

端末獲得、回線品質、料金プラン、auはそれなりに努力をしているとは思うけど、より良いユーザの利用環境の構築という点についての配慮が足りないせいで、すべてをぶち壊してしまっております。

先日もAppLog騒動があったばかりで、おいら自身はAndroidのOSや端末の未来に見切りをつけ、一定の距離を置くことにしますた。

一般ユーザもアプリを気軽にホイホイとインストールすることに警戒感を抱きつつあります。
スマートフォンはさまざまなアプリが利用できることがメリットなのに、それを心理的に抑制したくなるイメージを作ってしまった時点で、市場としては取り返しの付かない事態を招いてしまったと言えるでしょう。

ユーザにとっても、アプリ提供事業者にとっても、こんなに不幸なことはありません。


広告テクノロジーの進化は、人をハッピーにさせるという可能性について、否定するつもりはありません。
しかし、それが過度に個人に対する干渉することが、果たしてハッピーなことなんでしょうかね?


一般企業が提供するサービスならまだしも、通信キャリア自身にはこの辺をしっかりと考えてもらいたいと思います。




そして、最後に一言。

(Androidを使うぐらいなら)
iPhoneにしておいた方がはるかに幸せですよ。
 

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック