あちらで発表済みのVWの新型『The Beetle』の、日本導入に向けてのティザーサイトがオープンしましたよ、ということでありまして。
東京モーターショーでの正式発表ということになるわけですが、その前にVWのカラーリングコンテストなどを実施して、そちら方面への猛烈なアピールを開始しております。
この手のデザインコンテストってイメージが結構大切でありまして、素材がファッションアイコンとして許容されるかどうかが大きな分かれ目になります。
たとえば、現在のクルマでファッションアイコンとして成り立っているのはFiat500、スマートぐらいのものでしょう。そこにかろうじてBMW MINIが入るかどうかといったところであります。
(シトロエンDS3もファッションアイコン化を目指してますが、現状はマニアの需要を掘り起こした程度であります)
そこに新型TheBeetleが馴染むのかどうか?
VWのラインナップとしては久々にこうしたポップな感じの車種の登場ということもあって、ゴルフやポロで取り込んできた国産車からの乗り換え組に加えて、ハイセンスな層を取り込みたいという思惑がこのティザーサイトからはビシビシと感じられます。
ただ、良くも悪くもVW。
今までもセンスのいい人たちがポロやゴルフを飾ることなく素の状態で乗りこなす光景がよく見られたわけです。
しかしそこにあるのはファッションアイコンとしてのVWではなくて、手に馴染んだ道具としてのVWなんですよね。
先代のNewBeetleに関しても、一輪挿しを標準装備するなどさりげないおしゃれ演出が光ったわけですが、やはり利用のされ方としては素の状態が多かったと言えるでしょう。
それが悪いこととは思いません。
むしろ、先代NewBeetleは日本でも“変に飾らず小粋に乗り回すクルマ”としてきちんと認知された成功例だと思っております。
その証拠に、先代NewBeetleは女性のオーナー比率が極めて高く、また実際街中で見かける際もセンスの良さそうな女性ドライバーが多かったことが挙げられるでしょう。
で、素の道具として愛された先代NewBeetleではありますが、VWとしてはそれではあまりよろしくないと考えたようで、こうしたデザインコンテストの実施によって道具からファッションアイコンとしての脱却を図りたいんだろうなんて意図を感じたりするわけです。
1位のデザインは実際にクルマとして制作してプレゼントなんて話ではありますが、基本的には塗装というよりボディをラッピングするんでしょうねぇ。あんなもん塗装してたら大変なことになりますので。
ラッピングデザインというと、日本では痛車という独特のカテゴリーがありますが、あれはファッションアイコンではありませんのでこの場は除外。
で、ラッピングによるデザインというと思い出す話があります。
そう、一連のボルボさんの涙なくしては語れない壮大なストーリーが。
せつないボルボさん
諦めの悪いボルボさん
その後のせつないボルボさん
続・その後のせつないボルボさん
スウェーデンのボルボというブランドは、日本においては安全性を前面に押し出して、質実剛健なクルマというイメージが定着しています。
また、日本人が北欧デザインに抱く、シンプルだけどクオリティの高いイメージがダブることもあって、派手なデザインよりは落ち着いたデザインの方を支持する人が大半だと思います。
もちろん、そんなイメージを変えたいという企業側の思惑があることを、我々が全否定できるものではありません。
ただし、やっても状況を変えられないということもあるんです。
それがこのC30グラフィックカーの事例だったといってもいいでしょう。
俺達が自慢されたいボルボと、ボルボが定着させたかったイメージとのギャップ。
これはもう文化が違うという悲しき事実に、現実が相容れることができなかったお話だったわけです。
さて、話がいろいろ脱線しております。
VWの覇権主義に対する自らのカウンターカルチャーとしての存在意義を高めるためにも、TheBeetleはファッションアイコン化へのチャレンジは必然なんだろうなぁと思うわけであります。
その想いはよくわかります。
しかし、先代NewBeetleに比べてかなりマッシヴなデザインになったTheBeetleが、先代のような愛され方をするんでしょうか?という懸念も若干あるわけです。
特に先代のピカチュウアレンジに代表される、あのデザインだったからこそ自然に発生したポップな存在感としての評価が、今回のTheBeetleではちょっと方向性が違うと感じております。
むしろTheBeetleは、初代のビートル Bajaのように、躍動感溢れたバギーとして活躍する方がイメージとしては近いんじゃないかな、と思ったりするわけですね。
ファッションアイコンとは対極の存在ではありますが、これもまたビートルが愛された証拠でもあるわけです。
まぁ、見た目のイメージからはそういった方向性が容易に想像できるわけですから、ほっといてもそっち方面の一定の盛り上がりはあるんでしょう。
だからこそ、イメージが変わったことで取りこぼす可能性がありそうなファッションアイコンとしてのイメージ醸造にマーケティングのリソースを振り分けようとしているのかもしれません。
ざっくりとした予想をすると、新型のTheBeetleは、先代のNewBeetleに比べると女性のオーナー比率が下がると思います。
恐らくその層は、Fiat500に流れると思われるので。
その分男性オーナー比率が高まり、販売台数としては先代と同じぐらいの実績を挙げることはできると思います。
ただし、ファッションアイコンとしてのイメージは定着しないと思います。
今までのように、それなりにセンスのある人が素の状態で乗り回すのと、徹底的にカスタムする人の両極端に別れそうな気がします。
それが日本におけるTheBeetleの評価になったとしても、それはそれでいいと思います。
カタチは変わっても、“ビートルというアイコン”それ自身の価値は(おそらく)変わらないわけですから。
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