▲食べログから拝借しますた。
九段下から神保町方面へと歩いてみると、大抵の人がギョッとする建物がある。
明らかに周りの風景から浮きまくっているそのレトロな建物の名は九段下ビル。
その歴史的経緯によって手付かずの状態が長らく続いており、もう何年も前から解体の噂が立ってはいたものの、しぶとく生き残ってきた。
しかし、テナントの数はだんだんと減り続け、店舗として機能しているのは喫茶カリーナと東京珈琲を残すのみとなっていた。
東京珈琲は長らくこの地で営業してきた店であって、最近では廃墟系喫茶店としてのニーズが高かったようだが、その雰囲気を好んだ固定客がかなりついていた。
食べログの評価はこんな感じ。
通勤でほぼ毎日店の前を通っていたが、いつ潰れてもおかしくないような気がして、この廃墟の中の店は永遠に続くものと思っていた。
しかし、状況が変わったのは今年の9月。
九段下ビルの一部取り壊しの告知が出され、工事説明の看板を見ると、端の一部を解体するという内容だった。
この告知を見る限り、東京珈琲の部分は取り壊しの対象になっていなかったので、ずいぶん中途半端なことするな、と思ったことを覚えている。
建物に足場が組まれ、工事が始まったが、やはり東京珈琲はいつもの通り営業していた。
そんな日常からその時は何気なく告知を見て通り過ぎていたのだが、今日ふと前を通りがかると、東京珈琲が閉まっている。
解体の対象にもなっておらず、つい先日まで普通に営業していたのに。
店先には一枚の張り紙がしてあった。
要約すると、
長らくこの地で店を営んできて、これからもずっと店を続けたかったし、そのつもりだった。このような悔しさを滲ませるような内容の張り紙だった。マスターもさぞ残念だっただろう。
しかし、となりで解体工事が始まったことにより店内に振動やチリや埃が降ってくるようになってしまった。
アスベストの問題や、地震が起こった際の安全性の確保など、一番大切にしなければならないお客様の安全を確約することが出来なくなったので、9月末で店を閉めることにした。
閉店は急に決まったことらしく、おいらも前を通っておきながらちっとも気が付かなかった。
特に思い入れのある店ということではなかったのだが、やはり日常そこに当たり前のようにあったものが突然失われると、なんともいえない喪失感を感じるのも事実だ。
「いつまでもそこにあり続ける日常というものは存在しないんだ」ということをなんとなく思った、そんな出来事でありました。
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