本日の映画:「コクリコ坂から」

 
港北のワーナーマイカルは、上映前の予告編が長すぎる。
まずそこを指摘しておきたい。

ってことで、宮崎駿の劣化が激しい今日この頃、これからのジブリを担っていくのは誰なのか?的議論が花盛りではありますが、そんな議論の中であまり好意的に扱ってもらえない、世界一不遇な映画監督であるところの宮崎吾朗ちゃん監督の「コクリコ坂から」を観てきましたよ。

おいら、ジブリ作品を映画館で観るのは、ナウシカ、もののけ姫、崖の上のポニョに続いて4作品目ということで、実は割とジブリ作品への思い入れは強くない。
あまりにメジャー作品だとついつい敬遠してしまうという天邪鬼な性格が災いしているだけなので、嫌いというわけでもないのだが。

で、コクリコ坂からでありますが、興行収入では公開以来ハリーポッターとポケモンに阻まれて、ジブリ作品としては珍しくトップを取れておりません。

巷から聞こえてくる観た人の感想としては好意的なものが多いにも関わらず、観客動員という点ではあまり芳しい結果を出せていないようであります。

事実、ワーナーマイカル港北の上映スクリーンも、中規模なものになってしまっており、夏休み大作が多いことを差し引いても少し残念な感じではあります。

ただし、レイトショーであるにも関わらず、この回の客の入りは8割程度だったので、大人の世代の受けはいいのかな?という感じでありました。

ストーリーや評論についてはそれこそいろんなところで成されているので、ちょっと思ったことをいくつか書いておこうかと。

この作品、どんな人が観ないんだろうか?という点について。

KDDIがスポンサーに付いたことによって、そちら方面での露出が多かったりするのだが、シネコンに何を観るかを決めずにやってきた大阪弁のバカップルの会話がおもしろかった。

男「何観る?」
女「何がおもしろいの?」
男「夏休みだからハリウッド作品がいろいろあるけど」
女「ハリーポッターは怖そうだから嫌。」
女「トランスフォーマーとかカーズって車のこと判んないからパス」
女「コクリコ坂はどうなの?」
男「監督が宮崎吾朗だから評判悪いらしいよ。ゲド戦記とか超つまんなかったし」
女「あたし、観たはずなのに何にも思い出せない」
男「でしょ?宮崎駿の息子ってだけのボンボンだからね」
女「じゃあこち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所) the Movieにしよう」
男「これならいいかもね」

・・・こうして、こち亀の興行収入にバカ2名分がチャージされたのでありました。
どうりで日本にパンクが根付かないわけだ。


コクリコ坂からを敬遠する層について全般的に言えるのは、「宮崎吾朗監督作品だから」という点が極めて強いこと。
しかも、いっぱしの評論家気取りの言説が目立つのが、どうも気になるのよねぇ。

そりゃ確かにゲド戦記でやらかしてしまった事が原因であるのは間違いないので、自身が撒いたタネと言えなくもないが、コクリコ坂からの制作に当たってはずいぶんと反省し、心を入れ替えたことをアピールするようなインタビューが見られるように、今回はそれなりに真摯な姿勢で取り組んでいるようではある。

少なくとも“宮崎吾朗だから”というだけで敬遠してしまうのはもったいない、というのがおいらのコクリコ坂からを観た感想だったりする。

全体的に吾朗ちゃんに対する評価がゆるいのは、おいらがゲド戦記を映画館で観なかったので、金返せ!的な衝動に駆られていないから寛容になれてるだけだろ、という指摘もあるかとは思うけどw


っていうか、ジブリであろうがなかろうが、宮崎吾朗であろうが駿であろうが、1本の映画を楽しむという点においては、それはどうでもいい話でありまして。

この作品が講談社のコミックを原作としている点、また東京オリンピックの直前の昭和の横浜を舞台に2人の出生に関する数奇な運命について語られる点がウェイトを占めているわけですが、過剰な大作感を出そうとせず、日常の出来事の積み重ねに少し演出を加えた的な落としどころはいいアプローチではないかと思います。

昭和のノスタルジックな描写にえらく時間を割いていることが鼻につく部分がある。
その割に、主人公がメルと呼ばれる理由については言及がなかったりと、説明不足な部分が多かったりもする。
また、コミック原作ということでストーリー展開が漫画的であるのでしょがないとはいえ、ご都合主義的な部分が引っかかったりはする。

とまぁ、これを以ってダメな映画認定する人もいるんでしょうが、全体に肩の力が抜けていて、あまり抑揚がなくゆるい展開は、おいらにとっては心地よいものでありました。

っていうか、ジブリって大作志向の作品と、淡々とした日常を描く作品の2系統があるわけで、どちらかといえばおいらは後者の方が好きだという話であります。

「耳をすませば」との類似性という点を指摘されるといろいろと吹っ飛んでしまう部分が多いのは事実ではありますが、単独の作品としての評価には関係ない部分とも言えるわけでありまして。

ただ、脚本の端々に配慮や説明が足りない部分が目立つのはマイナス点。
朝の食卓の描写はあんなに丁寧なのにねw


そんなわけで、ダメなところを探せばきっとキリがないんだろうけど、少なくともこち亀 the Movieにお金を払うんだったら、コクリコ坂からにした方が日本映画のためになると思いますよ。

ってことで、来週のウィークエンドシャッフルのシネマハスラーコーナーがコクリコ坂らしいので、宇多丸師匠がどう出てくるか?興味津々。
 
 
 

この記事へのコメント

  • ぴぃ

    はじめまして。ぴぃと申します。

    「コクリコ」に関しては海鮮丼さんの感想と全く同じです。
    一部で興行成績の不振が伝えられていますが、やっぱり「ゲド戦記」で多くの観客の不興をかったのは大きかった気がします。

    それに、これは個人的な感想ですが、内容をベタでアナクロなメロドラマにしてしまったのはまずかったようにも思います。
    海鮮丼さんも書いてらっしゃるように、「日常」にバイアスをかけたこと自体は正解だったと思いますが、それならオフ・ビートでもアンビエントでも構わないから徹底して「日常」を描くべきだったのではなかったか?とも感じます。

    まぁ宮崎駿がそういうヌルい作品を作らせるとは到底思えませんが…
    2011年08月14日 04:42
  • こち亀が駄作だからココリコを見ろという発想は
    とってもおかしいと思います
    2011年08月19日 04:52
  • 海鮮丼太郎

    >ぴぃさん
    「日常」に特化した作品があってもいいと思いますね。
    それをジブリでやる必要があるのか、という議論はありそうですが。

    となりの山田くんがそのコンセプトに近かったわけですが、あれはあれでツラい映画でした。
    個人的には嫌いではないんですけど。



    相対的な話を主観で語っているだけですが、なにか問題でも?
    2011年08月19日 10:42

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