任天堂のギブアップ

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ゲームの本質的な面白さと3D表示はあまり関係がないと思っているので、3DモードをOFFにしても楽しめるゲームがどれぐらい出てくるか、それを見定めてからの評価になるんだろうなぁ、ってね。

なんてことを書いたのがNintendo3DSが発表された昨年6月のお話。
以降、当BLOGでも何回かNintendo3DSについては書いてきたが、今読み返しても全体的なトーンはどうも低めだったりする。

で、「たったこれだけが無いために…」なんてことを2月に書いて以降、3DSに対する言及がまったくなくなっている。

そりゃそうだよ。
使ってないんだもん。

結局購入したパッケージソフトは「nintendogs+Cats」の1本だけ。
これは結局、DS版となんら変わらない内容で早々に放棄した。

eShopで6月から販売が開始された「3Dクラシックス ゼビウス」も購入したが、twitterでつぶやいたとおり、買って2回起動しただけで終わった。

結局あれだ。
任天堂から、DSやWiiが登場した頃のような新しい提案は、Nintendo3DSには見られなかったということだ。


スタートダッシュはそこそこ良かったものの、販売は比較的すぐに落ち着き、震災によって消費者マインドが冷え込んだことが追い討ちを掛ける形になったが、“3DSならではの驚きを提供する”という根本の問題に対する解決策の提示がいつまでたっても出されないことから、遅かれ早かれ今回の事態は訪れていたと言える。
事実、海外での販売も好調とは言えないのだから。


そんなわけで、すっかり忘れていた3DSに関して、ひさびさに大きな話があった。

ニンテンドー3DS値下げのご案内
8月11日より、メーカー希望小売価格を15,000円に


すでに大騒ぎになっているのであんまし多くを語ろうという気にはなれない。
一応は25000円で購入した既存ユーザー向けの救済策も用意されてはいるわけだし、そのコメントにもあるとおり、それなりに真摯な姿勢を見せているようにも見えるから。


思うところはいろいろあるが、ひとつだけ言うとすれば

「任天堂は3DSで価格に見合ったサプライズを提供することを諦めたんだな」

ということだ。

ソフトラインナップが相変わらず過去作品の焼き直し続編ばかりで新鮮味が薄い状況であり、任天堂自身がその事に対する危機感を強く持っているものと思っていたので、驚くような解決策をいつか提示してくれるものと密かに期待していたのだが、結局値下げという回答となったということは、価格に見合った商品価値を提供できないというギブアップ宣言に等しい。

救済策で提示されている無料コンテンツ提供も、過去作品を3DS上でプレイできるようにしただけであって、3DSならではという点についての提案がまったく見られないわけで、しかもコアな任天堂ユーザーはこれらの作品をすでに持っている確率が高いこともあり、これに満足できる人は少数だろう。


値下げという施策は敷居を下げ、間口を広げることに貢献はしてくれるものの、じゃあ入ってきた人たちを満足させるための3DSならではのサプライズが提供できない限り、支持を広げることはできない。

残念ながら、任天堂は自らが築き上げてきたゲームユーザ層を拡大するという試みを、自らの手で潰してしまうことになった。

これは3DSに限った話ではなく、ゲーム業界全体に与える影響が極めて大きいという点において、大きなターニングポイントとして日本のゲーム史に記録されることになるだろう。
時代の変化に対応できないと、こういうことが起こるという、象徴的な出来事として。


ゲーハー板の連中のように偏執的に叩きまくるような論調に組みするつもりはないが、これは任天堂の3DSに対するギブアップ宣言というより、ゲームの未来に対するギブアップ宣言という気がしてならない。

もちろん体制を建て直してこれからも意欲的に作品を作っていくことにはなるのだろうが、無限の可能性を秘めていると思われたテレビゲームという娯楽において、もう任天堂から新たな驚きを与えられることは無いんだな・・・ということを悟った、そんな発表でありましたとさ。
   
  

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