アフターサービス満足度を掘り下げてみる(1)

 
 
さて、衝撃のアフターサービス満足度ランキングのネタを、少し深く掘り下げてみましょうかね。

個人的にこの手の調査に意味が無いとは言わないものの、その結果についてはかなりのバイアスが掛かっているという印象なので、必ずしも実情を反映していない、というのがおいら的スタンスであります。

当BLOGでは、自動車部門に特化して分析してみますが、とにかくブランド毎に抱えている客層からビジネスの方法まで違いがあり過ぎて、同一線上での評価が極めて難しいと感じているからであります。

もう一度、この調査の概要について記載することにします。
詳細については、現在発売中の日経ビジネス7月25日号をご参照ください。
【アフターサービス満足度調査の概要】
 2011年4月26日~6月2日の間、日経BPコンサルティングが保有するインターネット調査システム「AIDA」を使用して実施した。
 日経BP社と日経BPコンサルティングが保有する調査モニター約20万人に対し、月刊のメールマガジン「NBPC調査モニター通信」及び、電子メールでアンケートを告知。1万9900人から有効な回答を得た。

回答者の平均年齢は48.1歳。

男性75.4%、女性23.5%(不明1.1%)。

主な職種は、

技術・専門職 36.4%
事務職 23.3%
主婦 9.4%
経営者・役員 8.1%
営業職 7.7%

主な居住地域は、

関東 49.8%
近畿 18.0%
中部 11.6%

満足度指数は、各企業ごとの製品や事業のアフターサービス経験者に、アフターサービスの評価を「満足」「まあ満足」「どちらでもない」「やや不満」「不満」の選択肢から1つ選んでもらい、それぞれの回答者数に順に100、50、0、-50、-100を掛けた数値を合計し、その企業のアフターサービス経験者数(無回答は除く)で割ったもの。小数点第2位を四捨五入。▲はマイナス値を示す。
 なお、回答者数が30人に満たない企業はランキング対象から除外し、一部を参考値として掲載した。
 調査項目によっては、社名よりブランド名を優先させた場合もある。
長くなったが、こういった方法で算出されたものである。

当然この調査方法によって、すでにバイアスが発生している。

 ・日経読者もしくは日経を情報源としている消費者が対象
 ・回答者の年齢が平均48.1歳と高めである
 ・3/4の回答者が男性である
 ・IT関連に従事していると思われる技術・専門職の比率が高い
 ・回答者の7割が都市部在住


こんな感じになっており、ここから導き出される推論としては・・・

 ⇒一定以上の知識層の意見が反映される傾向がある(日経読者、都市部在住)
 ⇒満足いくまで徹底的なサービスを求める傾向が強い(高年齢)
 ⇒物質的なメリットより精神的なメリットを評価する傾向がある(高男性比率)
 ⇒問題の発生を嫌い、エキストラコストに厳しい傾向がある(高年齢、職種傾向)
 ⇒問題解決までの時間が、そのまま満足度につながる(高年齢、職種傾向)

とまぁ、こんなところだろうか。
世代ごと、地域ごと、可処分所得ごと・・・etcにアフターサービスに求めるものは異なると思うのだが、それでもまぁひとつの統計として共通して言えるのは、“問題が発生しないこと”および“発生した際に迅速に対応が行われること”の2点と言っていいだろう。


では、この前提を元に、2007年からの直近5年間のランキング推移を見てみよう。

※なお、2007年、2008年、2009年の数値はこちらから引用させていただきました。

afterservice_ranking_2007-2011.jpg
▲クリックで拡大

2007年データのみ、フォード、GMオペル、シトロエン、ルノーの名前があるが、以降の年は回答数が集計基準に達しなかったためランキングから除外されている。


こうして見ると、一貫してレクサスがトップを走り続けている。
これは、レクサスというブランドが「おもてなし」も商品の一部として提供していることもあり、徹底的な顧客管理と接客を行っていることに起因する。

購入後の点検などでディーラーへ入庫した際も、待ち時間の間にゴルフの試打スペースを用意したり、リラックスできる仕掛けを用意するなど、丁寧なもてなしをしてくれる。
また、(タイヤなどを除く)初回車検までのコストは車両価格に含まれており、点検終了後に支払うエクストラコストが発生しないことが、心理的な満足度を高めていることは容易に想像ができる。

アフターサービスのコストも車両価格に含め、予め徴収しておいてあるわけだから、レクサスにとっては過剰とも思える「おもてなし」をしても、採算性に問題は無いと言える。

レクサス車はトラブルがあまり発生しないことから、緊急での入庫という機会はあまり発生しない。
その分アフターサービスに接する機会が減るわけだが、レクサス流「おもてなし」は、問題がなくても定期的にディーラーから顧客の様子伺いの連絡が入ったり、またディーラーでもオーナー限定のパーティを実施することによって、購入後に高い満足感が得られる演出に余念がない。

これがレクサスがアフターサービス満足度で1位を取り続ける理由だ。
レクサスのクルマを気に入り、またアフターサービスの上乗せコストを予め支払うことに抵抗が無いのであれば、レクサスという選択は悪いものではない。


2位以下を見てみよう。
2位はホンダ、3位はトヨタと大衆車ブランドがランクインしている。
5年間を通じて両社とも5位以内をキープし続けており、多くの回答者から評価される分ランクが下がりやすいリスクを抱えながらもこのポジションに着けているのは立派なもんだと思う。
トヨタは昨年のリコール騒動で5位まで転落したが、顧客対応を強化したことによりランクを戻している。


4位にはスバルが飛び込んできている。
昨年は10位だったことを考えると躍進と言えるが、これは昨年からディーラーでの接客ルール見直しを行い、来店時には営業マンだけでなく店長も挨拶するようにするしたり、点検作業の際にはサービススタッフを必ず顧客に紹介するといった親近感を持たせる施策を採っているそうだ。

スバルだけでなくダイハツやトヨタのOEMも増えてきたことによりスバリスト以外の一般客が増えてきたこともあるのだろう。
そうした新規客を逃さないようにすることは重要だ。

しかし、おいらが先日スバルディーラー3店舗に行った際は、いずれもこういった接客にはお目にかからなかった。
このあたり、実際にどう改善されたかスバリスト諸氏に伺ってみたいものだ。



輸入車ブランドではトップとなるのが5位のアウディだ。
アウディが日本で売れ出したのはここ数年のことだが、実はアフターサービス満足度では長らく下位に低迷していた。
ポジションとしてはレクサスに近いアウディではあるが、両社の違いは何かというと、“クルマの品質”という部分に集約されるのではないか。

アウディ車はVWグループの中ではプレミアムブランドということで世界的に販売を伸ばしているが、高度な装備を搭載することによって故障などが比較的多く発生していると聞く。伝聞ですまぬ。

で、いざトラブルが起こると、ディーラー入庫から部品調達といった対応の面で輸入車メーカー故のハンディキャップが発生する。

場合によっては部品の空輸を待たなければならないなど、問題解決までに時間が掛かる傾向があるということだ。

これを解決するために都内に大きな整備工場を設けたり(余談だがこの場所はプジョーも狙っていた物件だったw)、ディーラーへの部品の配送を日祝日も対応などして、部品の注文から1日で配送できる体制を整えたのだそうだ。
これにより修理対応のスピードアップを図ることで、満足度を上げるということに成功した。
この取り組みは顧客対応の改善という意味では正統派の取り組みと評価していいだろう。

接客面でもレクサスに負けず劣らずの「アウディ流おもてなし」を実施しており、こちらが赤面してしまうほどのレベルであることは言うまでも無い。

こうしてアフターサービス満足度を高めたアウディだが、そもそものクルマの故障率が低くなれば、いっそうのランキング上昇が期待できるのかもしれない。

その分が、商品価格に上乗せされる傾向が強まっているのはどうかと思うが。


逆に昨年の2位から今年は8位と大きく評価を落としているのはVWだ。
これは少々意外な印象を受けるが、原因はある程度予測がつく。

VWは新車購入後から3年目の車検までに発生する定期点検の工賃を無料にするといった施策や、延長保証の価格を引き下げるといった施策を展開しており、大衆車の顧客対応としては優秀だと思う。

しかし、ここ数年VWが展開している国産車からの乗り換えを促すマーケティング施策によって、狙い通り国産乗り換え組が増えたことがこの評価を落とす理由になったと想定される。

装備、価格面では国産メーカーに引けをとらなくなってきたVWのラインナップではあるが、残念ながら国産車に比べるとトラブルが少なくないという事情がある。
また、大衆車ブランドであるため、点検整備が発生した際にはその都度費用が発生する。

VWに限らず輸入車の整備料金は、国産車に比べると割高である感は否めず、思いのほか維持費が掛かるというイメージがアフターサービスの満足度を下げている大きな要因になっているのではないか。

こうした傾向は、メルセデスベンツ(13位)およびBMW(14位)にも当てはまると言えるだろう。

メルセデスベンツやBMWについては、曲がりなりにも高級車を名乗っているわけだから、接客体制の改善と故障が起きにくくするような対策が急務だと思うが、上記したように大衆車ブランドとプレミアムブランドを同列に比較することのナンセンスさはご理解いただけるのではないだろうか?

この話、もう少し続く。
  
 
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