2011年4月11日
株式会社NRMパブリッシングは、東日本大震災の影響で4月号の発行を取りやめたデジタルカーマガジン『Bagnole』について、4月25日発売の5月号から発行を再開すべく準備を続けてきましたが、発行にかかるコストを工面するめどが立たず、5月号以降、iPad専用コンテンツとしてiTunes Store内のApp Storeでの販売を維持することが困難な状況となりました。なお、5月号用に既に取材を済ませている記事については、不完全なかたちではありますが、今後、このBagnole Online(http://www.bagnole.jp/)上にて公開させていただきます。また、Bagnoleの過去の号については、当面の間、App Storeにて販売を続けさせていただきます。
昨年10月25日の創刊号発売以来、短い間ではありましたが、ご愛読をいただき、ありがとうございました。これまでご購読いただき、5月号以降も楽しみにしてくださっていた読者の方々を失望させる結果となってしまい、お詫び申し上げます。またこの場を借りて、取材にご協力いただいた自動車メーカー/インポーター、そしてクリエイターの皆様にお礼を申し上げます。
残念ながら、我々の、電子専用雑誌をビジネスとして成立させる取り組みは不十分で、いったん撤退することを余儀なくされました。しかし、昨年からの電子雑誌/書籍をめぐる盛り上がりは、過去何度か到来した一過性のブームとは異なり、いつ、どの程度かはわかりませんが、近い将来、雑誌/書籍全体のなかで一定のシェアを獲得するはずです。いつかまたその場に加わることを、我々の新たな目標とし、精進したいと思います。
Bagnole編集長 塩見 智
NAVI for sale ⇒Bagnoleができました
といったエントリーを書いたのは昨年10月の話だ。
NAVIの休刊後にクルマ情報メディアとしての在り方を模索しながらスタートしたBagnoleだったが、もともとiPad専用コンテンツというユーザの母数が非常に限定的なプラットフォームでスタートしたこともあり、徐々に読者を啓発しながら増やしていかなければならないという宿命を背負っていた。
編集体制も資金的にも順風満帆ではなかったものの、内容について趣向を凝らしながら少しずつ前に進んでいた。
編集長の塩見さんやNRMパブリッシングの荻野さんとも、今後は対応環境を増やしつつ、大小さまざまなコンテンツを展開していくことでユーザー拡大を図っていきましょう、なんて話をしたところだった。
Bagnoleは塩見智という個性を前面に出して、リッチな表現で展開しつつ、コラムや写真集といった比較的コストの掛からない読み物としてのコンテンツを量産することで、まずは全体のボリュームを増やしていきましょう、なんて提案をしていたんだけどねぇ…
もともとがギリギリのラインで活動されていたところに、震災という予期せぬ外的要因で休刊せざるを得ない結果になってしまったのが残念でならない。
ただし、今回のBagnoleの休刊でひとつの方向性が見えてきた部分もある。
趣味としてのクルマという市場(クルマ自体に限らず、その周辺のライフスタイル市場も含めて)については、これからの日本においては縮小せざるを得ないだろう、という事実。
人々の心から余裕が消え、求められるクルマも実用性が重視されるようになるだろう。
それは先が見えない世の中において、どうしても『生活防衛』という意識が働いてしまうからであり、そこに必要とされる情報は「趣味性の高いクルマを楽しむ」といったBagnoleのようなメディアとはズレが生まれてしまうことになる。
このタイミングで休刊するという判断も、それはそれで正しい判断なのかもしれないと思う次第だ。
まぁ、紙媒体と比べて、電子書籍は再開する手間もそれほど掛からないしね。
余談だが、震災前後の電子書籍全体の売れ行きを見ると、じつはそれほど下がっていない。売れているものは相変わらず売れている。
そんなわけで、世の中落ち着いたらBagnoleのようなメディアは再び必要とされる時が来るから、その時になったらまた何かご一緒させてくださいな。
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