電子書籍元年が終わるようですが

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そんなわけで、世の中的には電子書籍元年だった今年も暮れようとしております。
2005年に設立(事業としては2000年より開始)された弊社も、その大きな波を受けつつも、割と足元を固めながら進んできた2010年でありました。
ビールとピザを囲んでの納会は、笑い声が響いております。

本を電子媒体で読む事って、いったい何なんだろう?

そんなことを考えながらも、我々はケータイ(だけじゃないけど)で魅力的な作品を出版社から許諾を受けリリース、多くの電子書店(CP)で販売してもらうというビジネスモデルを進めてきたわけです。
それが、(もちろん我々の努力など微々たる物ですが)年間500億を超える市場を形成してきたという事実があるわけです。

twitterでツイートしたところ驚かれましたが、ケータイの電子書籍サイトは文芸・コミック・写真集・その他を含めると3キャリアで1000サイトを越えています。
そして、2010年最大のヒットになったのは、「もしドラ」ではなくて、小学館のコミック「ノ・ゾ・キ・ア・ナ」であったわけです。
この作品は、約60話で1200万近くのダウンロードという実績を打ち立てたわけで、「もしドラ」が紙で100万部、電子で数万ダウンロードという実績など屁でもないほどの支持を得ていたりするのですが、残念ながらこういうことはあまりニュースになりません。

まぁ、限りなくエロ作品だからというのもあるわけですが、世の中の電子書籍をニュースとして伝えたい人、それをビジネスにしたい人の興味は、少なくとも今年前半まではケータイ(いわゆるガラケー)によって500億円以上と世界一の電子書籍市場を形成してきた既存のビジネスモデルは無かったもの、もしくは無視すべきものとして扱い、スマートフォンや電子書籍専用端末(GALAPAGOSやReaderなど)によってバラ色の電子書籍の市場が幕を開ける、という雰囲気を演出したいわけですね。

なぜか?

そういう伝え方をすることで、既存のビジネスフレームの再構築と、新たな儲けの手段を構築、そこに誘導したいという割と低レベルな理由からだったりするわけです。

世の中の流れ(というより上記のような思惑を持って声高に叫ぶ人々)として、著者への還元率を高め、誰でも参入できる市場としてAmazonやiPhoneのAppStoreなどを持ち上げる動きがあるわけですが、そうした海外のプラットフォームに依存することによるデメリット、というより危険性については、当然のことながら語られる事は少ないわけです。

ここでひとつ、冷や水をぶっかけるような話をしましょうか。
国内でもっとも盛り上がりを見せているプラットフォームといえば、そう、AppStore。
そこで、某有名人の電子書籍アプリを、定価より大幅にディスカウントしてセールを行い、twitterでたくさん宣伝を行ったことで、ランキングトップを何日も飾った人気の作品があったわけですが、それでさえ売上げはやっとこさ5ケタに届くかどうか、ということだったようです。
たとえ売上の70%が還元されるとはいえ、紙の本に比べて1/○程度の値段で5ケタ近くのダウンロードを売り上げたとしても、著者が得られる印税なんてものは一人月分の人件費も捻出できません。
世の中で話題になったって、しょせんはこの程度の市場性なわけです。

動画や音楽を入れる?インタラクティブな仕掛けを入れる?確かにおもしろいですね。
そうしたコンテンツが増える事は、電子媒体ならではの仕掛けゆえに、とても好ましい事です。
ただ、それによって高騰する制作費をきちんと売上げで回収できる見込みはあるんですか?
それできちんと次の展開へとつなげていくことができるんですか?


もちろん、スマートフォンへの市場のシフトは明らかに進みますし、いろんなチャレンジによってさまざまな電子書籍の形が生まれる事は、たとえビジネス上でバッティングする関係になったとしても、おいらは歓迎すべきことだと思っております。

ただ忘れちゃいけないのは、ケータイの電子書籍がなぜ世界一にまでなり得たのか。
そこには、魅力あるコンテンツを作った出版社(コンテンツホルダー)の努力もさることながら、1000サイトを越えるさまざまな電子書店が、自分たちの顧客に対して積極的に作品をアピールすることで、多くの人の目に触れ、それが購買へと繋がっていったという、水平展開のおかげでもあったわけです。

日本勢でもGALAPAGOSストアやソニーのReaderストア、大日本印刷のhontoといった独自の電子書店が立ち上がってきており、また通信3キャリアも独自の直営ストアをオープンするといった動きもあります。
(ドコモマーケット、ソフトバンクブックストア、LISMO Book Store)
どれも取り扱い数万タイトルという大型書店を指向してはいますし、我々もそのお手伝いをしておるわけですが、正直言ってこうしたサイトだけでは電子書籍の市場は伸びないでしょう。

なぜなら、ユーザニーズに応えるだけの機動力を持ち合わせていないからです。
もっと簡単に言えば、本屋としておもしろくないからです。

ケータイの電子書籍サイトを見てみれば一発でわかるはず。
ユーザーのニーズは圧倒的にエロコンテンツだったり、趣味性の高いコンテンツであったりするわけです。
また、そうした作品をオススメとしてきちんとプッシュしてくれる書店こそが、ユーザにとって便利な電子書籍サイトということになるわけです。

こうしたニーズに応えられる電子書籍サイトは、ケータイ以外ではほとんど存在しません。
(パピレスやeBook Japanなどのサイトがそのニーズの一部を獲得できている程度です)

そんなわけで、ケータイ並に1000サイトとまで言わないまでも、いろんなニーズを満たすためによりバラエティに富んだ電子書店が、きちんとビジネスができるようなフレーム作りをする事。
それが我々に与えられたミッションだと思って、日々活動を続けております。
よく言われるように「ヴィレッジヴァンガード」のような店が電子書店にも必要だといえば、その意味が理解できるでしょ?

少なくとも、AppleやAmazonに牛耳られた世の中では、彼らが電子書店を展開できる余地はほとんどありません。

それは、とてもつまらない世の中じゃないでしょうかね。

そんなわけで、ケータイの市場は緩やかにシュリンク(縮小)していくでしょうから、新しいプラットフォームへと我々も舵を切っていくわけですが、その根底には上記のように、さまざまな人が電子書籍に携わることのできる環境を構築する事で、バラエティに富んだコンテンツが生まれ、より多くの人がきちんとビジネスできるようにする、という目的を持って進んでいきます。

ってことで、2011年はスクラップ&ビルドが進む年になりますが、そんな状況の中で電子書籍の未来と可能性に賭けてみたいという方がおられましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

できること事とできない事。
まずはきちんとこういう点からご説明しますから。


そんなわけで、2010年は主にスマートフォンや新端末を中心とした電子書籍が話題になった年ではありましたが、必ずしもこれは長く続くものではありません。
むしろ2011年前半で、恐らく想像とはかけ離れた実績を目の当たりにして、トーンダウンするところが増える事でしょう。

勝負はそこからです。
もちろん、我々にとってもです。


きちんと本質を捉え、努力している人々の一助になれるよう、気持ちも新たにがんばっていきましょうかね。

さぁ、酒飲んでピザ食って、片付け済ませて早く帰ろう。
 

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