先週3日ほどトータル1000kmほどレンタカーでホンダのフィットに乗る機会があったので、現在保有している307swをベンチマークとして雑感などを少し。
まず、クルマ全体の評価から。
このクルマ1.5LのエンジンとCVT(無段変速機)の組み合わせによるコンパクトカーなのだが、まず最初に感じた事は、”よくできてるなぁ”という感想というより驚きだった。
このサイズのクルマが欲しいと思ったときには迷わず買うな、というほどの出来で、メーター類がちょっと主張が強くてウザい感じだが、その他の装備は質素で十分。走らせてみて何の不満もない。
■CVT(無段変速機)という技術
まず、CVT。無段変速ということで、アクセルを踏み込むと滑る感じがするが、この時はCVTに対して負荷がかかりすぎているので、その時はアクセルを緩めて滑らなくなる回転数に合わせる事が簡単に出来る。
おそらくこの状態で運転する事が燃費を伸ばすコツなんだろうな、と思われる。
『無段変則の加速はスクーターのようだ』という表現があるが、慣れればなんてことはない。
減速などで瞬間的にギアを落としたいという衝動があるが、2やLモードもきちんと備わっているし、パドルシフトのような装備があれば、、おそらく何の不満もなく、むしろベストに近いような状態の運転が楽しめるのではなかろうか、と感じた。
感触としては非常にいい感触。気に入ってしまいました。
CVTに対するホンダの味付けがうまいのか、CVTそのものの魅力なのかは、他車にじっくり乗った事がない(5km程度の試乗では何もわからない)のでからわからないが、フィットに限ってみた場合、非常に良く出来ているなと思った。
■ハンドリング
次にハンドル。従来の油圧によるパワステのアシストではなく、電動によるアシストになっているため、異様に軽い。
コンパクトカーゆえに挙動がフラフラするのは仕方がないが、ハンドルが軽すぎなので、高速道路で半分居眠り状態だと、露骨にフラフラしてしまう。ちょっと気を抜いてもフラフラしてしまう。
307swの場合は、良くも悪くも直進安定性が優れているので、それほど蛇行しているというほどのフラフラ状態にはならないが、これはフィットというクルマ故、なのだろうか?コンパクトカーだからしょうがない、ということなのだろうか?
■サスペンション
ここは露骨に307swと差がでてくるところだろうか。
段差を乗り越えたときの縦揺れが、何回も続くような感じでなかなか収束してくれない。
硬いダンパーでガコンといなしてしまう感じではない。安っぽさと言うか、残念だね。
もう少し、ダンパーが衝撃を吸収するような足回りにしてもいいんじゃないかと思った。
乗り味は柔らかめだと思う。
コーナリング時のロールは、思った以上の沈み込みがある。そこはまぁ、このクラスのクルマとしてはやむをえないのかもしれないが、これは日産ノートと乗り比べた場合どう感じるかが興味を抱いたところ。
(ノートは日産がフィットをベンチマークとして昨年末に発売したクルマであり、フィット+αの走りを売りにしている)
■内装
内装の質感は、おそらくフィットの真ん中ぐらいのラインナップだと思うが、それなりの質感がある。ちょっとゴムっぽい樹脂パーツに違和感を感じるが、クルマを道具として割り切るならこの質感は決して悪くない。
オーディオスペースが高めについてるので、ナビを取り付けても運転視線からの移動が最小限で済む点は非常に好感触だ。輸入車はこうしたナビを取り付けるスペースとしての重要性に気が付いていないために、旧来どおり低い位置にオーディオスペースを設置しがちだ。
オーディオスペースは、単にオーディオだけでなく、ナビといった情報端末が設置されるために、視界に入りやすいポイントに設置するべきだ、というトレンドは日本発と言っていい。さすがは日本車、この点抜かりはない…と思ったら2DINスペースのすぐ上にエアコン噴出し口があるので、インダッシュタイプのモニタでは干渉してしまうのが残念。
収納スペースの作り方とかはもう非常にうまくて、いたるところにヘコみ、窪みが用意してあって、そこにモノをほいほい置けるのがいいなぁ、と。
こういうところの使い勝手は日本車ってすごいなあと感じさせるところ。
■積載性
フィットは、ヘッドレストを外さなければならないが、センタータンクレイアウトのおかげで2列目シートを倒せば低くて広大なラッゲージスペースが広がる。
低いということがどういうことかというと、荷物を上に積み上げることができるわけで、奥行きも十分あるわけで、MTBを乗せて何の問題もないという積載性だった。
307swは2列目のシートを跳ね上げて載せたので、奥行きで20~30cmぐらいの余裕があるものの、自転車を載せるというアクションにおける使い勝手はフィットと大差なかった。むしろこの程度のコンパクトカーにこれだけ積載できるというのは、ある意味ショックだ。
初代デミオと同じように、ラッゲージスペースを確保するための発明的工夫が活かされていると言えるだろう。
■室内の騒音
これは、風切り音をひろったり、ロードノイズをひろったりと、車格相応なのかもしれない。フラフラなのと疲れやすいというのがあるので、長距離を走りたいという気にはならないんだけど、関東一円や一日ドライブ程度であればまったく問題ない騒音レベルではないかと思う。
ただ、中の人と会話をするにはロードノイズがちょっとうるさいかなという気がする。
115km/hで流れにあわせて巡航してみると、2500回転ぐらいで回っているので、CVTのおかげもあってスムーズさというのが感じられる。
これはこれで『ホンダってエンジンこんなに静かだったっけ?』と思うぐらい不満はない。
積極的な満足ということではないが、不満はまったくない。もうちょっと音が静かになればいいなと思うが、非常にバランスのいいクルマだなと思う。
■総括っていうか、307swと比較してみて
フィットと307swを比べた場合、価格差は約2倍だ。では、307swにフィット2台分の価値があるか?と問われると、307swの部が悪いのは明白だ。
最近307swの挙動がおもしろくないのでちょっと辛い評価ではあるものの、国産車というのも決して負けていないんだ、という思いを強くした。
フィットがこれだけ売れたのもわかる気がするし。
サンルーフがないということ。
307swの一番の特徴であるサンルーフだが、これがないということについて、何かデメリットがあるかというと、運転している者にとっては、そのデメリットはまったく感じない。なぜなら、運転中は上が見えないから。
だから、あれはあくまで同乗者を喜ばせるための装備であって、マストアイテムではないのかな、と。あるに越した事はないが、それだけのために307swを維持する必然性というのはないのかなぁと。
子供でもいれば別だけどね。
ってことで、冷静に考えてみると、アイテムとしておもしろいというのはあるんだけど、それにこだわる必要はないんじゃないか、というのが現時点での結論。
あとは、やっぱり右ウインカーはいいね。右で操作するのが自然であり、左である意味はない。(307swはウィンカーレバーがハンドル左側についている)
こうして検証していくと、日本車は決して欧州車に負けていないという思いを強くした。
特に、日本で乗ることを考えると、CVTのメリットというのはもはや無視できないレベルまで重要性を増しており、それに対して輸入車の取り組みというのは遅れている、というより見ている方向が違うようだ。
307swのATが日本で使い物にならないレベルの欠陥品であることを考えると、2クラスも下のフィットの乗り心地が優れている現状では国産車の方にアドバンテージがあるように思える。
だからといって今現在乗換えを検討しているのか?というと、そうでもないのだが。
ATだけなんとかなれば、307swも楽しく乗れるクルマではあると思うんだけどねぇ…
でも、次に買うとしたら間違いなく国産を選ぶ。
■走行データ
総走行距離:1020km
市街地:320km
高速道路:700km
燃費:16.9km/L
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