クルマ関連の雑誌が次々と紙から電子へと媒体をシフトし始めている。
10月25日には、4月に電撃的な「For sale」の表紙とともに休刊を迎えたNAVIが、その趣をほぼ同じくして『Bagnole(バニョール)』という新媒体をリリースした。
デジタルカーマガジン『Bagnole』 (iPad専用)
※この無料アプリをダウンロードして、アプリ内で購入手続きを行う。
編集長の塩見智はNAVI休刊後の数ヶ月、この新媒体の立ち上げに奔走していた。
塩見智は電子版「TIME」のiPad版を見て、
目にしたと際に受けた衝撃を忘れられなかったからだ。あの時、僕は雑誌と同じ手の動きをしながら雑誌と同じか、それ以上の情報と楽しさを受け取った。これだと思った。と語っている。
雑誌の未来の姿としては、使い古された言い回しだがインタラクティブ性を高めたリッチなコンテンツという方向に行かざるを得ないという現状と、単純にこうした体験が面白いと感じた塩見智の思惑がひとつの形としてこの世に出たということになる。
もちろん、電子版ならではの楽しい体験が出来ることは、読者体験としては嬉しい反面、こうした仕掛けをリッチにしていくことは、制作費の高騰を招く懸念もある。
(編集だけでなく、取材の時点でビデオ収録などのスタッフを用意しなければならなくなるため、総じて時間とコストが増大する)
これを数百円というコンテンツの70%という取り分で回して行こうとすると高い購読率を確保しなければなず、ハードルがけっこう高いと感じる。
創刊号は450円での販売(in application purchase)であったが、これが今後も続くかは不明だ。
創刊号の内容とボリュームを見ると、コンテンツの内容としては物足りなさが若干感じられる。
この内容で定価を上げられたら正直買い続けるかどうかはわからないし、かといってお値段据え置きで記事のボリュームが減っても同じだ。
創刊号はご祝儀の意味で購入するユーザーも多いとは思うので、次号以降が本当のユーザーの評価ということになるだろう。
得てしてこの手の継続購買率は、スタートが頂点となりだんだん下落していくものなので、5号ぐらいまでの間にどれだけ固定ファンを獲得できるかが勝負となる。
個人的には閉塞感が伴いつつある電子書籍界隈のビジネスの中で、電子雑誌はいろんな突破口を開ける可能性があると思っているので、Bagnoleには是非とも頑張ってもらいたい。
ただし思うのは、上記したようにリッチなコンテンツもいいけど、まずはビジネスとしてきちんと継続できることを最優先に考えるべきだと。
そのためには、仕掛けはほどほどに、NAVIの後継者として記事の内容を充実させることも忘れないでね、と言いたいのである。
「すごい」とか「びっくりした」は電子書籍コンテンツの内容に対する評価ではないのだから。
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