思惑と判断。
なんだかよくわからないものが出てくると、まずは驚き、怯え、とりあえず追従しようとする。
今思えば、ここ数年の各社のハイブリッド開発狂想曲は、乗り遅れまいとするパニックのような状況だった。
トヨタのハイブリッドの登場から10年以上が経過して、やっとその実力と将来性がある程度見えるようになって、各自動車メーカーは落ち着きを取り戻したように見える。
ハイブリッドは万能ではない。
しかし、条件によっては燃費とCO2削減に効果がある。
つまり、使いどころをきちんと定めて、必要だったら採用し、そうでなければ無理して搭載する必要はない。
欧州メーカーはこの辺の取捨選択を一通り済ませたように見受けられる。
そんな中で、BMW MINIのウォルフガング・カトラーは、PSAのディーゼルハイブリッドを例に出して「MINIにハイブリッドは必要ない」とぶち上げている。
Mini 'don't need diesel hybrids'
カトラー曰く、508やDS4に搭載されるHybrid4は「重く、高価なユニット」であり、欧州の市街地では役に立つだろうが、高速道路で役に立つものではないとの主張をしている。
当然のことながらこれはポジショントークではあるものの、MINIという小型車のプラットフォームでハイブリッドを実現することは、ステイタスシンボルとしては成り得るかもしれないが、実質的なメリットはほとんどないという判断なのだろう。
親会社のBMWはハイブリッドを積極的に投入する姿勢ではあるが、MINIはそうした似非環境性能を謳うようなことはせずに、既存技術のブラッシュアップで対応する、と。
アウディがA1をハイブリッド化すると息巻いているのとは正反対の姿勢ですな。
MINIがどこを向いているのか、というと、やはりディーゼルエンジンの効率アップというところに着目しているようだ。
エンジン内部の摩擦軽減、噴射圧の向上、ターボレスポンスの最適化こそがカギになる、と。
意外なことに、可変バルブタイミングについては、プライオリティーは低いんだそうな。
VWがすでにBlueMotionテクノロジーで、ディーゼルでもハイブリッドと同等の燃費を実現できることを証明しているので、MINIがディーゼルに特化するという路線は別に珍しいことではない。
しかし、燃費で大きく遅れを取っていたはずの欧州車がハイブリッドという飛び道具無しでここまで改善を進めてきたのは素直に驚いてしまう。
日本では10月にホンダがフィットハイブリッドを投入すると発表され、30km/Lの燃費を実現して160万円を切る価格が話題になりそうだ。
しかし、ベースグレードのフィットであっても24km/Lは走るわけで、ハイブリッド化した際のメリットはそう大きいものではない。
そもそも、ハイブリッド化による機構とバッテリーの重量増で、コンパクトカーにはハイブリッドは向いていないというのは当初から言われていた事だが、国内の消費動向に引っ張られる形でホンダとトヨタがパニック的に突き進んでいる状況は、世界的に見たら物笑いのタネになるんじゃなかろうか?
欧州とは走行パターンの違う日本国内であればメリットとして活かす事ができるかもしれないという主張は、恐らく実燃費が明らかになるにつれて少なくなるんじゃないか、と予想している。
日本でもハイブリッドに適した使いどころがあることは否定しない。
プリウスはいいクルマだと思うし。
ただやはり、ものには向き不向きがあるわけで、適材適所で対応していかないと、ムダなものを作って結局売れなかった、なんてことにもなりかねない。
日産はハイブリッドで出遅れたが、世界戦略車として新型マーチを開発、26km/Lというハイブリッド並のガソリンエンジンを送り出してきた。
マーチは世界中で売ることができるが、フィットハイブリッドやトヨタのコンパクトハイブリッドは世界中で売れる商品か?
そんなことを考えると、ハイブリッドにあまりリソースを突っ込まないメーカーの方が、意外とこの先うまくやれるんじゃないかという気がしないでもない。
そして、PSAがリリースしてくるハイブリッドの出来がひどく心配になってしまう今日この頃だったのでした。
この記事へのコメント
本田太郎
フィットがノーマルで24なのでHYB化すれば35くらいいくかと思っていましたが、たった+6程度でしかないんですね。
それならマーチのようにアイドリングストップだけでコンパクトカーなら十分のような気がします。