そこに客はいるんだろうか?(3)



高度なゲームからカジュアルなゲームへ。
有料のゲームから無料のゲームへ。

プレイヤーの志向がこのように移動してきた、なんていうのが昨今の状況。
その流れの延長上にソーシャルゲームが加わったことにより、プレイヤーの遊び方が変質しているというのは紛れも無い事実だったりする。
もちろん、すべてのプレイヤーが移動したというわけではないので、従来型の質の高いゲームをプレイしたがる層が壊滅したわけではない。
現実に、ケータイ向けでもドラクエやFF、桃鉄といったゲームはそれなりにプレイされているわけだから。
ただ、問題はその総数が実はそれほど多くはない、という話だったりする。


で、話をレトロゲームの回顧厨に戻す。
好きなゲームが移植されれば、とりあえずそのプラットフォームを手に入れてまでプレイしたがる、という回顧厨の消費行動は、ある意味「昔のものを懐かしむという心理」と、「新しいモノ好き」というふたつの側面を持っていると言える。

日本において、ケータイが最先端のデバイスであり、そこに無限の可能性を夢見ることのできた00年代であれば、そこで自分の好きなゲームが出れば喜んでお金を払った。
それが回顧厨の行動心理だ。

しかし、10年代に入って状況が一変している。
スマートフォンの躍進だ。

技術的にスマートフォンが優れているからとか、そんな話がしたいのではない。

日本のケータイがガラケーなどと呼ばれ、明らかに行き詰っている状況にあって、ケータイに夢を見出すことが出来なくなっている。
もっとハッキリ言えば、回顧厨たちはケータイに飽きている。

それに対してスマートフォンは、少なくともしばらくは夢を与えてくれる可能性を秘めている。
だからこそ、大して意味もないアプリにお金を投下するようになったわけだ。

スクウェアエニックスが、iPhone用にFFを移植して発売したが、お世辞にも遊びやすいとは言えない内容にも関わらず、瞬間的にブレイクしたのは記憶に新しい。

しかし、購入したプレイヤーの大半は、恐らく1時間もプレイせずに放り出していることだろう。
彼らにとって、iPhoneでFFが動いていることが重要なのであって、FFが本当に遊びたいわけではないのだ。


じゃあ、そうした回顧厨がまたケータイに帰ってくるのか?というと、そうでもないような気がする。
彼らにとって、ケータイはもう魅力的なゲームのプラットフォームではないないからだ。

相変わらずケータイでも良質なゲームがリリースされ続けているものの、基本的には既存のプレイヤーを逃さないようにするのが精一杯で、新たな客を呼び込むことは難しいだろうと思う。

つまり、市場は飽和点を過ぎ、縮小傾向に向かっていると考えるべきなのだ。
ユーザーが減り続ける状況の中で、今までと同じようなゲームを作り続けても、それをプレイする人がいないのであれば意味がない。
まさしくそれは、「いいものを作っていればいつかは売れる」といって撃沈し続ける日本の家電メーカーの発想そのものだからだ。


ここで唐突に話題を変える。

ゲーム=コンテンツ

と考えると、今おいらが直面している問題にリンクして説明がしやすい。

おいらもケータイで電子書籍を生業としているので他人事ではない。
何度目かの電子書籍元年などと言われる昨今であっても、将来的な市場予測は楽観できない。

電子書籍に関する調査でも、ケータイ向けはぼちぼちピークで数年後に緩やかに減少に向かう、ってな話。
http://www.impressrd.jp/news/100707/ebook2010

電子書籍のサイトを例にとると、昨年比20%以上で市場が伸びてるにも関わらず、サイト単独で利益を出している会社は上位の10サイトぐらい。

広告出稿や制作費負担なんかを考えると、今後利益を出し続けるのは厳しいんじゃないかという気がするわけで、近いうちにサイトの統廃合や新しいプラットフォームへの移行なんかが進むんじゃないかって話もちらほらと。


そんなわけで、市場が縮小を迎えることがわかっている中で、会社としてどういった方策を採っていくべきか、というのは最重要な検討事項であるわけで。

会社のリソースの大半をケータイ向け電子書籍の制作に振り分けてるうちの会社も、新規案件は急速にiPhone、Android向けが増えてきた。

理由は簡単。
そこにニーズがあるからだ。

もちろん何でもかんでも手を出すわけではないが、リソースを振り分けるなら、少しでも客のいるところを目指すのは必然かと。

相変わらず話が長い上に推敲しているヒマが無いから書きなぐっているが、結論めいたことを少し。


何が言いたいのかというと、コンテンツの品質に対して客がお金を落とすマインドが低下していたら、結果としてビジネスにならんよなぁ、と。

じゃあ、お金を落とすマインドが高いところにも手を出していくのは自然の流れだよなぁ、と。
(お金を落とす=案件としてお金になる)

全面的に移行するのはリスクが高すぎるので、日銭を稼ぐためには既存のプラットフォームを、明日の芽を育むために新たなプラットフォームを。

そこに客がいなくなる前に。
体力のあるうちに。
打てる手を打ってみるのが得策なんじゃないかと思うわけだ。
 
独り言にしてはずいぶん長くなった。
まぁ、ネタが切れそうだったのでちょうどいいか。
 

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