安全装備はケチるな。



クルマの安全性に関しては、衝突安全性(パッシブセーフティ)のイメージが先行しすぎており、事故を未然に防ぐ緊急時の回避性能(アクティブセーフティ)に関してはあまり重要視されないという傾向は、何も日本に限った話ではないらしい。

PSAの商用車、英誌のテストで横転

記事ではESCと表記しているが、ここでは今までの慣例どおりESP(Electric Stability Program)の表記で進める。
(横滑り防止装置の各メーカーの呼称はボッシュの一覧表が詳しい)

ESPに関しては、アメリカが2007年に義務化、欧州も2011年より新車、継続生産車も含む全車が2014年までに義務化される。
逆に言えば、まだ義務化されていない地域があるということだ。

で、今回の記事が出たのはイギリスであるという点が興味深い。
欧州でのESP普及率は50%を超えたとの報道や、一部の評論家では「欧州では標準装備されているESP」という表現を使っていたりするが、少なくとも現時点でイギリスにおいてはESPの標準装備は義務ではない。

これはたまたま新型シトロエンC3の装備をチェック(25ページのスペック参照)していて気が付いたのだが、新型C3は標準グレードにはESPは装着されておらず、上位グレードのExclusiveにのみ搭載されている。

つまり、ESPの有効性は認められるものの、法律による義務でないのならESPは装着せずにコストダウンしましょう、というのがPSAの判断だったということだ。
日本ではトヨタが高々とESP展開宣言をしたものの、最近の廉価グレードに設定されていないとご立腹の評論家諸氏もいたりするが、法律で縛られていない限りは企業のモラルなんてものはこんなものだ。

乗用車で比較的重心も低いC3であれば、実用面では確かに問題は無いかも知れない。
しかし、上記の記事のような背高バンであれば話しは違ってくる。

動画を見てもらえば一発でその意味が理解できると思うが、重心が高いクルマほど、急ハンドルを切った際の挙動をコントロールでき難くなる。
結果として転倒という事態になれば被害は甚大だ。

たとえば安全装備の代名詞とも言えるエアバッグが作動するような衝撃の場合、大抵の場合そのクルマは廃車にしなければならないようなダメージを負う。
しかしそれでも命が助かればエアバッグを装着していることをありがたいと思うだろう。
それがどうしてESPになると意識が低くなるのだろうか?
ESPを装着していたおかげで危険を回避できたのであれば、クルマのダメージは生まれない(もしくは少ない)可能性があるが、非装着の場合は命の危険を伴う事故を引き起こす恐れすらあるわけだから。

日本においてはエルクテスト(衝突回避テスト)のような極端なシチュエーションは発生しないなんて思っているとしたら、それは意識が低いと言わざるを得ない。
極端にミニバン率の高い日本の状況にあってはなおさらだ。


とはいえ現実的なESP普及のためには、法律による義務化とエアバッグ割引と同じように任意保険での優遇なんかの後押しが必要になる。
現時点においては、任意保険においてはESP装着で5%程度の割引をされるケースがある。
このことをもっと前面に出してアピールする必要性もあるのではないかと思う。

上記の記事の話では、結局PSAはTeepeeとNemoのESP標準化を進めるというが、どうでしょね?日本でも公共機関(もしくは第三者機関)がきちんとエルクテストやってESPの有効性をアピールすれば、普及は一気に進むと思うんだけど。

・・・さて、この先何を言いたいかはもうおわかりですね?
 
 

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