失敗プレゼンテーション

スパイラルホール

プレゼンテーションの未来形とはどのようなものか。
ってことで、Kazuo Kawasaki ANTHOLOGY:Super Liveに行ってきたわけだが。

デザインをひらめきや感覚ではなく、デザイン理論としてどう捉えるかという話をきちんと聞くのは初めてだったのだが、デザインの根底にあるアプローチ、考え方の一部に触れられた事は自分にとって大きな収穫だった。
しかし、それを詳細に説明出来ないあたりに自分の理解度の低さが見え隠れするのだが。
途中でちょいと寝ちまいました。すんません。
ただ、今回の講演で語られた内容を振り返りながら、『DesignAnthology of Kazuo Kawasaki』を読むことで、感覚的なものではないデザインの本質みたいなものが少し理解できるんじゃないかと思ったりもするわけで。
 
さて。
注目のデジタルステージによるビジュアルサポートはどうだったのかという話に移ろうか。
正面に3機のプロジェクタを連結させた映像を投影(ダライアス方式)し、即興の効果音と映像の演出を入れることでライブ感を出すというコンセプトは、試みとしては面白かったと思う。
ただ、成果物としてのプレゼンの内容は、当初謳われていた新しいプレゼンテーションの姿というものはあまり感じられなかった。
ライブであるということが聴衆に伝わりにくかったというのがその理由だ。

第2部になって、平野クン自身のプレゼンテーションが行われたが、結論から言えば

『典型的な失敗プレゼンテーション』

だった。
デジタルステージの過去、現在、未来という切り口で語られたのだが、プレゼンテーションで重要な時間配分とメリハリというものがまったく欠けており、結局何を伝えたいのか、新しいプレゼンテーションの姿とは何なのかという部分について十分伝えることができていなかった。
1時間の予定を30分もオーバーし、肝心な部分の説明を省略するなど、とてもじゃないがプレゼンテーションとしての体を成していない。

ただ、何も収穫がなかったというわけではい。
平野クンが大学時代にサロンを作りたい、ということで学生寮の一室からスタートした『秘密基地とデジタルときわ荘』の話から、motion diveの誕生、どのようにしてPhotocinemaやIDが誕生したのか、という『やりたいことをやる』というデジタルステージの考え方。
スキルではなく、Love度でユーザの心を掴んでいきたいという熱意。
それに反して、プログラマーが1人しかいないという事実。それが、数々の障害が修正されない根本的な原因であることもわかった。
そして、プレゼンテーションって何なんだろう?という問いかけと答えについては、おいらも頷くところが多かった。

デジタルステージ(=平野クン)という存在は、非常に危ういバランスの上で成り立っているということだ。
やりたいことをやる。ユーザとの一体感を大事にする。その溢れんばかりの熱意に魅力を感じるユーザは確かにいっぱいいる。おいらもその一人だ。
その反面、過去を振り返る余裕がない。だから、不具合修正といったことに無頓着とまで言われるわけだ。

今回のプレゼンテーションでは、現在開発しているお仕事を楽しくするプレゼンテーションソフトのコンセプトを披露するにとどまった。
『CeLL PROJECT』と名付けられたこの製品は、この時点ではまったくカタチとして存在していないとのことだった。
今現在、コンセプトを練りこんでいる段階だとのことで、ここで聴衆に対してひとつの提案があった。

『CeLL PROJECTの特別版を全員にプレゼントします』

その代わり、一緒にCeLLを作っていって欲しいという訴えだった。
何が必要で、どんなアイディアを盛り込んでいくのか、そして製作過程を公開してみんなで共有しながら製品を完成させていきたいという意思表明だった。

そして、製品のエヴァンジェリストになって欲しいという意味を込めて、EVANGELIST PASSなるものが配られた。
発売は来年を予定しており、他に目立った新製品の予定もない。
その間、CeLLの開発に集中する事になるのだが、その間デジタルステージという存在を忘れないで欲しい、ってことでもあるらしい。

熱意はわかった。
やりたいことがどういう方向を向いているかもわかった。
気持ちとしては、応援してもいいと思っている。

ただ。

販売ブースのスタッフにも聞いたが、motion diveとQuickTime7の問題については『古いソフトなので…』、IDの海外から閲覧できない問題は『次回のメジャーバージョンアップで…』といった歯切れの悪い回答に、100%応援したいという気になれないのも事実だ。

新しいユーザを取り込むこと、皆が楽しくなれるソフトを開発することも重要だが、その可能性を信じて安くもない製品を購入したユーザを蔑ろにしていい理由もない。

突っ走ることが平野クンのアイデンティティであることはわかっているが、たまには後ろを振り返ることも大切だと思う。
 

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