Lifeと加ト吉によるラジオの新しい可能性

 
ご報告です。本日、株式会社 加ト吉 様とTBSラジオ「文化系トークラジオ Life」が正式にスポンサー契約いたしました。 Twitterが縁で本当にスポンサーになっていただけるとは感無量です。カトキチなう!!! #life954 #katokichi

今日、地味だがとても大きな出来事があった。
TBSラジオで月1回放送されている、文化系トークラジオ Lifeに、加ト吉がスポンサーについたのだ。

これだけ見れば、何が大きな出来事だったのかわからない。
そう、結果としては、ラジオ番組にスポンサーが付いた、ただそれだけのことなのだ。

しかし、このラジオ冬の時代にあって、番組スポンサーを獲得する仕組みが機能しなくなっているという状況を知る者としては、加ト吉という大手企業が、しかも代理店を経由せず、番組スタッフとスポンサーの直接交渉により契約を締結したという事実に驚くとともに、それがとんでもない偉業であることを理解するだろう。

本来ならば、ラジオ番組のスポンサー獲得は放送局の営業部隊と、広告代理店によって取り仕切られてきた。
しかし、新聞やテレビなどより先に広告不況に陥ったラジオという媒体において、この枠組みは機能しなくなってきていた。
マスメディアであるという自負とプライドが思考を硬直化させ、それが“ラジオ番組のスポンサーになる意味”の説得力を持たなくなったからこそ、スポンサーはラジオから離れてしまったのではないか?

少なくともラジオを30年以上聞き続けてきたおいらからしても、今のラジオ番組が(数は少なくなったものの)過去の黄金期と比べても遜色ない番組づくりをしていると感じていただけに、これら良質な番組にスポンサーが付かない事実に歯がゆい思いを感じていた。

スポンサー離れの影響により制作費の削減が行われる中でも、制作の現場ではおもしろいラジオ番組を作ろうという努力が続けられてきた。
少ないギャラでもがんばるスタッフや出演者、そして豪華なゲストなどに頼らずに内容の質で勝負するといった努力がリスナーにも届き始めている。
その代表的な例が、TBSラジオのライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフルや、今回の文化系トークラジオ Lifeと言える。
(TBSばっかりなのは他意はないです。他局でも好きな番組はあります)


そもそも事の発端は、LifeでTwitter特集が組まれ、そのムーブメントとしての検証が行われ、番組のTwitterアカウント @life954でスタッフがつぶやきはじめた。
それに先立つタイミングで、企業としてTwitterを有効活用していた加ト吉のアカウントの存在があった。

Twitterとラジオの相性がいいというのはLifeの番組内で語られていたが、それが実体化するように加ト吉とLifeのアカウントが交流し、Lifeのプロデューサー(黒幕)が加ト吉にスポンサーの依頼をTwitter上で行うという歴史的な発言がなされた。
@KATOKICHIcoltd これもなにかの縁なので、よかったら番組のスポンサーになりませんか? #life954
6:08 AM Nov 27th movatwitterで KATOKICHIcoltd宛
http://twitter.com/Life954/status/6092536411

これに応える形で加ト吉と黒幕との打ち合わせが行われ、本日のスポンサー契約の正式発表となった。

明らかにされているのは、今回は黒幕が直接Lifeという番組の魅力について加ト吉にプレゼンをし、それに応じる形で加ト吉が契約に応じた、という事実。また、その間に代理店が介在していない直接契約である、という事実だ。

もちろん交渉の内容は推測するしかないのだが、もともと日曜深夜1:30という放送休止枠で月に1度放送されているLifeという番組を存続させるためにはスポンサーが必要であり、その獲得のために黒幕が苦労していたのも感じられた。
たまに番組のリスナーが自分の会社でスポンサーになると名乗りを上げるケースがあったが、安定的とは言い難くどうやってスポンサーを獲得するかというのがLifeという番組の最大の課題だった。

今回の黒幕の動きは、本来であれば営業部門が調整すべき話であったにも関わらず、直接交渉を行うという、ある意味ご法度とも言えるアクションだった。
これを快く思わない者がいても不思議ではない。

しかし、番組の魅力を一番理解し伝えることができるのは、その制作スタッフだ。
そして、深夜という時間帯と夜食の需要という現実的な広告の利点で加ト吉にアピールしたのは、番組を理解し、リスナーを理解している黒幕だからこそできた話ではなかったのか、と。

翻って営業の現場は、番組の聴取率データというものは持っていても、個々の番組が持つ魅力を理解し、スポンサーに対しその魅力を訴えることができていただろうか?

おいらはTwitterが歴史や政治を変えるとか、そんな神田敏晶師匠みたいな大風呂敷話まで信じる気にはなれない。
ただひとつだけ確かなことは、Twitterは思いを同じくする人と人とをつなぐ役割を果たす可能性を秘めている、ということだ。

黒幕がひとつの突破口を開き、ラジオとスポンサーの可能性を提示して見せた。
可能性はここにひとつの形となった。

今後のラジオが必ずしもすべてこうした直接契約モデルに移行するとは思っていない。
むしろ代理店が介在したほうがうまくいく事例だってあるだろう。
ただ、こういったやり方があるというのは、硬直化した代理店や営業の現場の思考をリセットし、ラジオとスポンサーの関係を問い直す契機になったのではないだろうか?
そして残されたわずかな時間にラジオを復権させる最後のチャンスが与えられたと認識すべきだ。

おいらが#twiradioというタグをつけてラジオ関係者に向けてひたすら発していた、小口のスポンサーやモノを提供するスポンサーの可能性を検討すべきという論旨は、この硬直化したラジオの広告モデルを番組本位に再構築してみてはどうか?という想いから出たものだ。

もし嫉妬心とかくだならい理由で代理店や営業現場が黒幕の足を引っ張るようなことがあったら、おいらたちリスナーは本気で怒るからな。


ラジオに携わる人たちは皆いい人ばかりだから、そんな心配は必要ないかw

情報はオープンにされた。
あとは、みんなでラジオの魅力を考え、伝え、より良いものにしていこうよ。


「文化系トークラジオ Life。この番組は、加ト吉の提供でお送りします」

この言葉が深夜のラジオから聞こえてくるのを、楽しみに待ってます。

そしてその先に、ラジオというメディアが何ができるのかということを考えていきましょう。

さぁ、ラジオが楽しくなってきたぞ。
  

[追記]
黒幕さんからコメントもらった。
Life954: @kaisendon ありがとうございます。ただ、営業や広告会社にもLife好きでなんとか良いスポンサーを見つけようと努力してくれている人がいますので、足を引っ張るなんてことはないと思っています。 #life954 #twiradio
約9時間前 webで

そうですね。
ラジオに携わってる人は、立場は違えど熱意を持ったいい人が多いというのはおいらの経験則からも感じているところなので、これをひとつの契機にしてもらいたいものです。

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放送+Twitterの可能性
Excerpt:  今年、むしろここ数ヶ月にネット上で最もホットな話題に上ったのは「Twitter」(ツイッター)ではないでしょうか。  我が文化通信でもこの程登録し、まだまだ活用法は試行段階ですが、“つぶやく”という..
Weblog: 編集部ブログ“BunLOG”
Tracked: 2009-12-14 10:29