作家の戸井十月が、1997年よりスタートしたバイクによる五大陸走破の旅。
7月より最後の大陸であるユーラシア横断行をスタートし、11月4日ホンダの青山本社で終了した。
足かけ12年、総走行距離10万余キロ。
本人曰く、ただの道楽に多くの人たちがサポートしてくれたおかげだとのこと。
その言葉に偽りはないだろう。
ホンダのショウルームで記者会見に臨む戸井十月の表情は、疲れを感じさせない喜びに満ちたものだった。
BLOGでも何回か語ってきたが、おいらが戸井十月に興味を持ったのは、スカパー(CS)の旅チャンネルで放送された、南米大紀行を偶然観た事に起因する。
もともと旅が好きということもあり、よく旅行番組を見るのだが、その中でも戸井十月の番組は、自身がバイクで走ることで感じた景色や人々のふれあい、そして何よりその旅の空気感というものが伝わってくるような、かなり良質な番組だったりする。
おいらが興味を持ち始めた時にはすでに4大陸の走破を終えており、近いうちに残った最後のユーラシア大陸にアタックすることがわかっていただけに、それから彼の著書をチェックしたりして、その痕跡などをフォローしていったのだった。
で、7月2日に出発すると知り、慌てて旅の無事と成功を祈った応援のメールを送った。
おいらは戸井十月のように、世界をバイクで旅するようなことはできないかもしれない。
だから、せめて気持ちだけでも一緒に連れてってくれ。
そんなことを書いて送信した。
せっかくリアルタイムで旅の状況を追えるのだから、ゴールぐらいは一緒に共有したい。
そんな思いで午後半休を取って青山に駆けつけたのだった。
さて、記者会見の話に戻る。
そもそも今回のユーラシア横断は予定より少し早めに終了した。
本来であれば11月中旬か下旬あたりになると予想されていたが、10月末にはウラジオストックに到着していたらしい。
で、11月3日に富山港に着いて入管を済ませ、余裕を持って記者会見に臨むつもりだったらしいが、11月3日は文化の日でお休み。入管手続きが行えず、4日の朝にやっと手続きが完了。
その足で富山から南青山までぶっ飛ばして帰ってきたそうだ。
そりゃ疲れるよなw
ってことで、記者会見は16:30から始まっていたが、最初に旅の映像が流され、イメージソングが披露され、戸井十月本人がが会場に姿を見せたのは17:00ちょうどのことだった。
まぁこれは、演出上の配慮だとは思うが。
▲ASIMOがお出迎えで握手
そもそも戸井十月はなぜバイクで五大陸走破などという計画を立てたのか。
バイクとは、クルマでも電車でも味わえない、その地の空気感を味わうことのできる乗り物であること。
そして旅の醍醐味とは、人々と触れ合いにある。
そんなわけで、北極や南極を除いた、世界の人々や景色を見てきてやろうというのが発端だったそうな。
人間誰しも、人生の中で大きな目標を立てるもんだが、戸井十月は別に旅作家ではないし、バイクに関しても30代から乗り始めたという状況でありながら、世界を目指すというのは男のロマンとしては最大級のチャレンジだと思う。
おいらの今まで最大のチャレンジが、アメリカ3ヶ月一人旅とかだもんなぁ…
で、そのチャレンジをするにあたり、ホンダのサポートがかなり重要だったとのこと。
ホンダの広報部がアフリカツインと2台のCR-Vを提供している。
アフリカツインはすでに販売が終了しており、旅に出発するに際し毎回レストアして新品のような状態で送り出してもらっているそうだ。
今回の旅を終えたことで、トリップメーターはほぼ10万キロに達したが、転倒などの破損を除き、トラブルらしいトラブルはほとんどなかったとのこと。
(旅先で多くのライダーと遭遇し、ほとんどがBMWだったが、結構な頻度でトラブっているのを見かけた。10年落ちのアフリカツインは驚きの対象だったそうだ。)
▲旅を終えたアフリカツインと2台のCR-V
景気が良いときはホンダにもスポンサードの依頼が山のように届くもんだが、昨今の景気低迷で実際にサポートを受けられるケースはかなり減っている。その中で、戸井十月の五大陸のサポートを続けたホンダへの感謝の念はかなり深いものがあるようだった。
実際、ホンダのスタッフたちはかなり熱心にサポートしており、戸井十月もそれに押される形で何度も助けられたと語っていた。
こういうところはホンダの社風というか、好きだからという信念が企業活動の域を超えて旅を成功に導くように尽力したんだろう。
今回のユーラシアチャレンジは、ポルトガルのロカ岬を出発してウラジオストックまで、約18ヶ国(正確にまだカウントしてないらしい)、約26000~27000kmを走破したことになる。
欧州各国の快適さから、トルコを越えた辺りでだんだんと(人も自然も)過酷な状況になっていき、シベリアではいつもより早い寒気の訪れに苦労させられたそうだ。
今までの旅の中でもっとも過酷だったという言葉にあるように、途中でバイクをトラックに積んで走らざるを得ないような状況に陥ることもあり、その辺りは旅日記でリアルに感じることができるだろう。
「これからどうするのか?」の質問に対し、戸井十月は
「今までの規模の旅はもうできないだろう」
「旅してきた中でもう一度見たい風景、会いたい人々がいるので、そうしたところにもう一度行くような旅を続けるかな」
「(ゲバラの著書があるように)チリやブラジルなど中米各国への思いが強い」
「逆に、中国はもういやだ(笑)」
などと語っていた。
この辺りは、テレビと著書の方で何を感じたかを語ってくれると思うので、そこに期待したい。
ホッとしているようでもあり、充実感に満たされているようでもあり。
兎にも角にも、やり遂げた男の笑顔はすばらしい。
「帰ってきてまず何がやりたい?」
「孫と猫を抱きたい」
こんなところが、もう還暦を迎えたいいオヤジなんだなぁ、と。
戸井十月さん、ユーラシア大陸走破おめでとうございます。
そして、10万キロ余にわたる五大陸走破お疲れ様でした。
まずはゆっくり休んで、改めて旅の土産話を聞かせてください。
▲応援団との記念撮影
[2011.04.18]
この旅の模様を綴った著書がようやく発売。
▲道、果てるまで
―ユーラシア横断3万キロの日々+4大陸10万キロの記憶―
この記事へのコメント
生塩 義之
過酷な道を黙々と走り又、それぞれの町、村での人とのかかわりを見て私も、もしかして走れるんじゃないかと、ふっと勘違いをするほど感情移入をしてしまいました。
還暦を過ぎた戸井十月氏には感動より感激をしています。
海鮮丼太郎
コメントいただきありがとうございます。
やはり旅好き、バイク好きにとっては戸井さんの旅は最高に憧れますよね。
電車やクルマでは通りすぎてしまうだけ。
かといって徒歩や自転車といったストイックな旅とも違う、バイクという乗り物の旅だからこその出会いが、戸井さんの番組に引き込まれる要因だったんだと想います。
5月14日に池袋で戸井さんのトークショーがありますので、ぜひ生で話を聞かれてみることをお薦めします。
http://kaisendon.seesaa.net/article/196580632.html
take