カーテレマティクス市場に新たな動き(2)

 
前回のつづき。
 
で、そのカーテレマティクスを利用するための方法としては、2つある。
ひとつはBluetooth対応のケータイを使って通信する方法。
もうひとつは、専用の通信モジュールを定額で契約して利用する方法だ。

ケータイのBluetoothを使って通信する方法は、一番手軽で利用のための障壁が低いと言える。

ただし注意しなければならない点がある。

当然ながらこれはパケホーダイなど通常のパケット定額サービスの対象外となり、いわゆるデータ接続料金が発生することになる。
データ接続定額プラン(ドコモで言えば「定額データ スタンダード割)などに別途加入していないと、利用料金は青天井という恐ろしくてまともに使う気にならない状況だったりする。

つまり、こういったテレマティクスサービスを安心して使うためには、通信費用は定額(もしくは上限が定額)料金で契約するのが実質的な前提になる。
そのための各メーカーが定額で利用できるデータ通信モジュールを提供している。
サービス別にまとめるとこんな感じ。

サービス名キャリア初年度料金(カッコ内は次年度以降)
インターナビウィルコム7350円(11550円)
G-BOOKKDDI無料(12000円)
カーウィングスウィルコム月額1200円


ってことで、このジャンルにおいてはウィルコムが結構頑張っていたりする。
(トヨタはKDDIの株主でもあるため、こうした通信モジュールにはKDDIのものを利用している)

これはウィルコムの通信モジュールがもともと組込用途に向いているということと、そちら方面に関して営業活動を行っていた結果でもある。
おいらも前の会社でウィルコム通信カードを使った決済端末の開発に携わったこともあり、いろいろと経験をさせてもらった。良いことも、悪いことも、悪いことも、悪いことも。

一応全国をカバーしており、渋滞情報の送受信とかだけであれば比較的データ量も少ないことから、128K程度の通信でも十分。
エリア的には渋滞の発生するのは都市部であり、都市部をカバーしているウィルコムであれば問題は無い。

データ定額通信はコストを安くするのが難しく、しばらくこの市場に参入してくる者はいなかった。
ウィルコムにとってもこの市場は安定した収入の見込める市場として維持しておきたかっただろう。

年間だいたい11000~15000円前後。
これがテレマティクスを使うための最低限のコストということになる。
(付加サービスを利用すれば、これにプラスして料金が重ねられていく)

前回書いたように、各サービスとも利用料金を目立って書きたくない気持ちがわかるってもんだ。

これを高いと見るか安いと見るかはクルマの利用状況によって大きく異なってくる。
ただし、テレマティクスの普及率が15%前後で推移していることを考えると、ブレイクスルーのためにはまだまだ何かが足りないわけだ。

ってことで、意外なところから参入者が登場。

カーナビの通信料定額を実現する「カーナビプラン」を提供
~パケット定額サービスにプラス210円/月で、自動車メーカー純正カーナビ通信料が定額に~


つまりこういうことだ。
ソフトバンクのケータイでパケットし放題に加入していると、ケータイでのパケット通信はどれだけ使っても上限4410円で利用できる。
この状態で上記「カーナビプラン」に加入すると+210円、つまり月額4620円でカーナビのテレマティクスサービスのための通信もまかなうことができるということになるのだ。

悔しいが、ソフトバンクはこういうのがあったらいいな、というところをかなりの確率で突いてくる。
単独で通信モジュールを新たに契約するのではなく、今契約しているケータイをベースに、付加サービスで利用料金を積み上げていくという論法。

何が画期的なのかというと、人はそれほど長い間クルマに乗っているわけではない、ということ。
また、運転中は基本的にケータイは使用しない、ということ。

ここから導き出されるのは、大して乗ってる時間は長くないのに、年間1万円以上掛けて専用の通信モジュールの契約をするのはなんだか高くついてもったいない。

今持ってるケータイが使えるといいのだが、現状では別途データ通信定額プランに入らなければならず、月額6000円近い追加になってしまい本末転倒。
理想的なのは、今使ってるケータイの定額プランが適用できること。
だって、運転中はケータイ使わないんだから、テレマティクス用に転用できればいいじゃない。

ってことになるわけだ。

現在のところテレマティクスにおけるデータの通信量はそれほど多くはないというのは上記したとおり。
今後リッチなサービス(動画や音声配信)なんかが始まったらデータ量は飛躍的にアップするが、現時点においては現実的でないため、どのサービスも様子を見ている段階。
ということで、ソフトバンクとしてはこのサービスを展開してもあまり既存の帯域を圧迫しないだろうという思惑が働いたと思われる。
それが、月額+210円という絶妙な価格設定に現れている。

悔しいけど、おいらもソフトバンクをメインのケータイとして考えてしまうかもしれない。
それほどまでにインパクトが大きい。

残念ながらiPhoneには対応しておらず、しかもテレマティクス対応のナビを持ってないので今の段階で悩む必要はないのだが、今後この選択肢はおいらの中でかなりのウェイトを占めることになるかもしれない。

通信インフラのコスト問題が片付けば、カーテレマティクスは一気に広がる可能性がある。
その時に選択できるキャリアがソフトバンクしか無かった、なんてことのないようにKDDIもドコモも対抗策を打ち出して欲しいと本気で思うぞ。

自動車は全国に8000万台あるわけだ。
それらの10%がテレマティクスに対応するだけでも800万回線が必要になるわけで、そこを取りに行くのはキャリアとして必然的な戦略だと思うのだが。

ってことで、いきなりこんなのに参入されてしまったからにはこの言葉を叫ばなくてはならないだろう。

ウィルコム死亡確定。


ご愁傷様でした。
 

この記事へのコメント

  • 筑紫哲也@mixi

    ソフトバンクはARPUが他キャリアよりもだいぶ低いため「なんとしても通信料収入を底上げしていかなくてはならない」というキャリア側の事情もあるような気がします。加入者は増えても通信料が増えなければ収入は増えていかないのですから。
    とはいえ、ソフトバンクのネットワークは明らかに細いので、iPhoneのように膨大なデータトラフィックが発生させられても困る(だからiPhoneだけは無料でグループ会社の無線LAN設備を利用できる)ので、適度にパケット定額制の上限にいってくれる、だけど、それ以上には増えないようなサービスを提供したい。というのがミエミエな戦略ですね。
    真摯なウィルコムにはなんとか再生してもらいたいものです。
    2009年10月23日 21:46
  • 海鮮丼太郎

    おぉ、専門家からのコメントキタ━(゚∀゚)━!

    ソフトバンクの最大の欠点は、通信インフラに投資をしないところなんですよね。
    キャリアとして一番お金を掛けて信頼を得なければならないところなのに。

    だからライフラインにソフトバンクを使うのは怖いんですよ。
    ただ、こういったまぁ別に繋がらなくてもあまり困らないような用途には結構食い込んでくるでしょうねぇ。

    価値観が異なる会社と競争しなければならないKDDIとドコモも気の毒だとは思いますが、やはり独走を許してはいけないと思いますので期待したいところです。

    じゃないと、カーテレマティクスがいつまで経っても離陸できないのでw
    2009年10月23日 22:38
  • 通りすがり

    というよりか、たぶんiPhoneでのナビ市場がたちあがるから
    こんなことせんでいいという判断じゃないでしょうか?
    はやくtomtomでないか楽しみにしてます。
    (tomtom car kitは便利そう)
    2009年10月25日 15:50
  • とおりすがり

    iPhoneで、カーナビプランはいらないでしょう。
    iPhoneでやればいいので。
    世界では、portable GPS naviが主流ですから。
    tomtom for iPhone早く日本で出ないかな。
    (tomtom car kitだけでも早くほしい)
    2009年10月25日 16:19

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