カーナビゲーションの取り付け位置というのは、本来最も気を使わなければならない。
スピードメーターの類に次いで、いやむしろそれより頻繁に目を向ける表示装置であると共に、現在位置を確認したり、(本当は禁止されているが)運転中に操作をするために画面を凝視してしまうからだ。
ナビゲーション(以下ナビ)画面から現在地を確認するためには、まず視線をナビの画面に映し、地図の読み取りを行なう。
そこから地名や道路の形状などを判断し、必要な動作を確認した上で、また運転視界に視線を戻す。
これだけの作業だが、意外とこの一連の動作に要する時間は長く、数秒間を要することがある。
運転中に数秒間視界を奪われるということがどれほど危険かは、運転をする人であれば誰でも実感していることだろう。
オーディオやナビの操作に気を取られて児童の列に突っ込んだ、といった事故のニュースが未だに無くならないことからも、その危険性は感じているものの、抜本的な解決策が進んでいないことの現われと言える。
原因は大きく二つ。
ナビメーカーが操作の複雑すぎるナビを製造し続けていることと、クルマメーカーがナビ取り付け位置に十分配慮していないこと。
しかし、国産車メーカーではこのあたりに配慮をする車種が増えてきている。
特にトヨタはこの辺を非常に良く考えており、センターメーター内にナビゲーションをビルトインしたり、出来る限り運転目線に近い場所にナビゲーションを設置できるようにしている車種が多い。
おいらの前車がビスタアルデオであったのだが、スピードメーター類とナビをセンターメーターとしてを統合したデザインは、運転中の視線移動が最小限で済む(運転視界の中にナビ画面があるので、とっさの場合でも判断がしやすい)ことから使い勝手も良く非常に優れたものだった。
▲ビスタアルデオのセンターメーター
1998年発売の車種でここまでやっていた。
この流れはプリウスなど現在の多くの車種に展開されてきており、これらの流れを他のメーカーも採用するなど、できるだけ運転視界に近い場所にナビを設置する流れができつつある。
こうしたナビに関するノウハウは国産車が一歩先を行っていると言っていいだろう。
翻って輸入車はどうか。
ナビの取り付け位置について気を配ってるメーカーはほとんどない。
ナビを使う文化が浸透していないのだから仕方ないといってしまえばそれまでだが、少なくともグローバル展開する車種については、少し配慮があっても良さそうなものなのだが…
プジョーの場合の話をすると・・・
307swを買うときにかなり問題になった要素が、ナビ取り付け位置(=2DINオーディオスペース)の低さだった。
上記の通り、ビスタアルデオからの乗り換えだったので、特にこの点が気になった。
オンダッシュ式のナビを設置すればナビ画面の問題はクリアできるが、その場所にはインフォメーションディスプレイ(燃費や各種車両情報を表示する画面)が鎮座しており、それらを塞ぐ形になってしまう。
また、オンダッシュ式は衝突事故を起こした際に吹っ飛んできて同乗者を傷付ける恐れがあるため、あまり積極的に選びたくは無い。
そんなわけで、妥協策として少しでも画面位置を高くしようと、2DINビルトインではなく、チルトアップ式のインダッシュナビを設置したのだが、それでも視線をかなり落とさないと画面が確認できない。
しかもエアコン噴き出し口を塞いでしまうので、多少は慣れたものの実用上はかなり不満が残っている。
その代わり、インフォメーションディスプレイに表示される瞬間燃費表示が見やすいので燃費を意識した運転ができるのは助かっているが。
ナビ取り付け位置に関しては、308でも大きな変更はなかった。
若干上向きにオフセットされており、2DINビルトインのナビであれば、視認性は若干向上したものの、視線を下に落とすという行為自体は変わりがなく、誉めるというほどの改善ではない。
メーカーの言い分としては、最も運転視界に近い場所にはインフォメーションディスプレイが設置されており、それを活用することが望ましいということなのだろうが、こと日本においてはナビの設置位置の方が重要だ。
理想的には、インフォメーションディスプレイとナビが統合されているともっと良い。
BMWのiDriveが理想的なインターフェイスを実現しているが、それに追随する動きはそれほど無いのが現状だ。
で、ナビの設置位置に話を戻そう。
歴代の車種は総じて取り付け位置が下になってしまうという問題は今も解決していない。
ダッシュボードに1DINのスペースだけでも設けてくれれば状況は変わるのだが、純正ラインナップではどうしようもない状況だ。
そこで、ということで目をつけたのだろうか、207用にこんなキットを開発した会社がある。
ナビ男くん プジョー207専用2DINカーナビ取付キット
ナビ男くんというネーミングはどうなんだ、という気がしないでもないが、製品のコンセプトが非常に素晴らしい。
ダッシュボードに存在するインフォメーションディスプレイを取り外しオーディオスペースに移設、空いた場所に2DINスペースを確保することによって、2DINタイプのナビをビルトインできるようにした。
▲標準状態
▲ナビ男くん製 2DINカーナビ取付キット装着状態
ナビの使い勝手だけであれば、オンダッシュナビを設置すればいいのだが、このキットはデザインの一体感を損なうことなく、またインフォメーションディスプレイの機能を殺さずに両立しているところが見事だ。
チルト式インダッシュのようにエアコン吹き出し口が塞がれることもないので、考えられる中では理想的な取り付け方法だと思う。
こうした試みは広く知られるべきだし、評価されるべきだ。
現在のところ自社でナビを買った人に対するサービスという位置付けのようだが、地場系のプジョーディーラーなどに卸展開をしてもいいんじゃなかろうか?
こうした安全に関わる改善の選択肢は、より広く提供されることが望ましいと思うんだが。
唯一懸念点というか残念なところは、インフォメーションディスプレイの瞬間燃費表示が移設によって見づらくなってしまうため、エコ運転をするのに向かないところか。
VWのように、瞬間燃費表示はスピードメーター付近に表示してくれれば良かったのだが、こればっかりはどうしようもない。
チラチラっと下を見ることで視認できる程度であればいいんだが…
代替手段として、外付けの燃費計を取り付けるという方法があるが、あいにくプジョーに対応している製品は見当たらなかった。
この辺も選択肢が広がると、インパネ周りの欠点は補えることになるんだろうけどね。
この記事へのコメント
凡侭
日本市場を重視してるメーカーはダッシュボード上にディスプレイ内蔵用の専用ケースを作ったり(BMW3er)、ナビ画面専用とも思える新ダッシュボードデザインとか(ベンツCクラス)色々工夫しているみたいですけどね…。
でも日本で一番売れてるはずのVWは未だにエアコン噴出し口の下の位置だったりして。
海鮮丼太郎
Cクラスもそういえばやってましたね。
洗練度合いがBMWに比べると天と地ほどの差がありますが。
凡侭
ところでiDriveとは別に、以前BMWJapanオリジナルで国内のナビをダッシュ上に取り付けるユニットがあったんですが、これがまた微妙なものでしてね…。
参考:http://www.bmw.co.jp/jp/ja/newvehicles/3series/sedan/2005/campaign/200810_msports_naviedition.html