GT by Citroenの試み

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今更ですが、責めてばっかりじゃ不公平なので。
Gran Turismoがちゃんとお仕事してますよ、というお話。

パリモーターショーで「GT by シトロエン」を公開

訃報をニュースにしちゃうぐらいネタがないかと思えば、メーカーと深くコラボレーションしたこういった企画を打ち出してくるあたり、ネタの仕込みと投入のバランスがあんまりよろしくない気がしないでもないが、これはこれでGT5の魅力を打ち出す立派な方策だと思うわけで、パリショーでシトロエン自身の扱いがそれほど大きくないのが気になるものの、試みとしては良くできましたと言えるんじゃないでせうか。

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メーカーがモーターショーでコンセプトカーを出すのは、未来のビジョンを提示することが目的なので、必ずしも市販化を想定しているわけではない。
ただ、披露したからには、そのコンセプトカーがどんな走りをするのかデモンストレーションしたい。
しかし現実問題として、コンセプトカーとはいうものの走行テストをしてなかったり、エンジン積んでなかったり、酷い場合にはただのハリボテだったりする。
まぁ、モーターショーで展示するだけだったら、見られるのはデザインだけだから、それでもいいのかもしれないけどね。
クルマを走行させるまでに必要な開発・検証作業は膨大な手間とコストが掛かる。
だから、コンセプトカーとして世界に披露するとしても、必ずしも実際に走るところまで作り込むのは稀だったりするわけだ。

ただ、昨今のクルマのデザインは、CADを使って行なわれており、設計段階では(市販化するかどうかは別として)そのクルマがどのようなパフォーマンスを見せるか、というところまではコンピュータでシミュレートできる。
実際、GT by Citroen のデモンストレーションムービーも、フルCGで制作されているわけだ。

だったら、その延長上のコンピュータ上で走行体験させればいい、というのはひとつの選択肢として魅力的だ。
10年前だったら絵空事だが、今の世の中にはPS3がある。いや、もっと高性能なPCやXBox360もあるけど。

もう一方で、開発の遅れと競合勢力との争いが激しさを増す中GT(=PS3)としては、コンセプトカーをGT上で再現することで独自色を打ち出したい。
両者の思惑が妥協の少ない部分で一致(≠完全一致)したのが、今回このような形でお披露目になったんだろう。
ハイスペックなゲーム機を活かす方法として、これは非常にストレートで説得力のあるアプローチだと思う。

コンセプトカーを走らせるという試みは、グランツーリスモ コンセプト 2001 TOKYOですでに行なわれていたので、今回が革新的な出来事というわけではないが、あの時はまだPS2の処理能力が追いついていなかったのと、各メーカーの開発したコンセプトカーをただモデリングしてGT上で走らせているに過ぎず、あくまでゲームソフトとのコラボレーションに留まっていた。
それに対して今回の試みは、コンセプトカーの企画段階から深く関与することでマーケティングレベルでのコラボレーションを実現したわけで、他の勢力(競合ソフト)を差し置いて優先的にデータの使用権利を得るという、他者との差別化を図る上では重要な戦略。

ゲーム機の表現力が向上することで、逆に他の勢力と差別化を図ることが難しくなってきている昨今、GT(=Only on PS3)の立場を確保するために、こうした政治的な戦略というものが効力を持ってくるのかもしれない。

まあそれとは別に、リアルなクルマをシミュレートした場合その挙動が本物とどれだけ違うかが、バッシングの格好のエサになるが、架空のクルマだったら(メーカーがOKを出しさえすれば)そのフィーリングが正しいということになるんだから、開発に余計な神経を使わないで済むかもね。

ただ、それが行き過ぎると今度は、展示車すら作らないで、CG上でデザインされたコンセプトカーをただ走らせる、なんてことになりはしないかと心配になる。
それやったらリッジレーサーじゃん、ってことで。

いや、GT上でKAMATAのマシンを操ってみたいという要望はありますよ。
でも、それやるんだったら、モータートゥーングランプリみたいな番外編みたいなもの作る方がいいだろうねぇ。

ってことで、あとはこの試みにどれだけのユーザーが好感触を持ってくれるのか。
少なくとも欧州のゲーム&クルマファンには大ウケなので、その目的は果たされたと見ていいんだろうけど。
 

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