2016年の輸入車市場を振り返る(2)

さて、ずいぶん間が開いてしまいましたが2016年の輸入車市場についてのつづきです。

前回は2016年の輸入車市場があと少しで30万台に達するところまで来ているという話をしましたが、もう少しトピック的な部分を掘り下げてみましょうか。


再掲になりますがこれがトップ20ブランドの前年対比実績です。

2015年は日本の輸入車の代名詞であったVWの販売をメルセデスが逆転したことが話題となりましたが、それに加えて2016年はついにBMWまでもがVWを抜き去るという衝撃的な結果となりました。



 2016年輸入車トップ20ブランド実績
メーカー2015年2016販売台数20152016順位
販売台数販売台数前年比順位順位前年比
Mercedes-Benz65,15967,378103.4%11
BMW46,22950,571109.4%32
VW54,76547,23386.2%23
Audi29,41428,50296.9%44
BMW MINI21,08324,548116.4%55
Volvo13,51014,553107.7%66
Jeep7,1299,388131.7%77
Peugeot5,9067,403125.3%108
Porsche6,6906,887102.9%89
Fiat6,0326,717111.4%910
Renault5,0825,303104.3%1111
smart1,0124,508445.5%1912
Land Rover2,9793,165106.2%1313
Jaguar1,3492,883213.7%1814
Ford4,8562,14344.1%1215
Citroen1,9782,009101.6%1516
Abarth1,4721,857126.2%1617
Alfa Romeo2,3211,76776.1%1418
Maserati1,4491,32391.3%1719
DS9251,129122.1%2020


■輸入車の代名詞ゴルフ、BMW MINIにその座を明け渡す
メーカー全体としては絶好調のメルセデス、BMWに対し苦戦のVWという図式が明白になっておりましたが、それを象徴するような数字があります。

以下はモデル別トップ20の推移です。

2016年にモデル別で一番売れた車種は長らくトップに君臨してきたVWゴルフを押しのけてBMW MINIがその座に就きました。


モデル別ランキングTOP20
順位メーカーモデル名201620152014
1BMW MINIMINI24,54821,08317,596
2VWGOLF22,80225,63531,410
3Mercedes-BenzC Class17,76021,03115,867
4BMW3 series11,94712,05015,835
5VWPOLO10,90312,27113,766
6BMW2 series9,8648,182データなし
7Mercedes-BenzCLA8,5578,0544,376
8AudiA3 series8,06310,60410,400
9Mercedes-BenzE Class7,9006,0978,938
10BMW1 series7,7248,0807,723
11Volvo40 series7,0057,0267,324
12Mercedes-BenzA Class6,9736,7529,461
13BMWX15,891データなしデータなし
14AudiA4 series5,807データなし5,641
15Volvo60 series5,4475,3164,796
16VWPASSAT5,0584,136データなし
17Fiat500/500C4,2294,3704,650
18Mercedes-BenzGLC4,1473,910データなし
19Mercedes-BenzS Class4,1155,8446,706
20VWThe Beetle3,9035,0437,251

モデル別とはいいますが、これはボディバリエーションも含めてという話になります。

■ゴルフに含まれるモデル
 GOLF(GTI/GTE/R含む)
 GOLF Variant
 GOLF Touran
 GOLF Alltrack

■BMW MINIに含まれるモデル
 MINI 3 DOOR
 MINI 5 DOOR
 MINI CONVERTIBLE
 MINI CLUBMAN
 MINI CROSSOVER

なんだかズルい気もしますが、日本でも昔カローラ○○(セダン、フィールダー、ランクス、スパシオ)といった派生車種を一まとめにして

『日本で一番売れている車はカローラ!』

ってやってたのと同じ理屈です。


こうしてみるとBMW MINIはすべて単一モデルとしてカウントできる分だけ有利ではありますが、しかし対するゴルフも日本における輸入車の代名詞として長らくトップに君臨してきたクルマであります。

2003年からの統計では、BMWの3シリーズに肉薄されることはありながらもトップを譲り渡したことは一度もありませんでしたので、その意味では非常に衝撃的な出来事ということができます。

ディーゼルゲート事件により本来取り込みたかった国産車からの乗り換え需要が一気に冷え込んだことと、ゴルフ自身がモデルライフ後半で鮮度が薄れたという事情も相まってトップから陥落したということになるのでしょう。

とはいえ今後MINIは

『日本で一番売れている輸入車はMINI!』

という宣伝文句を使えることになります。
このインパクトは結構大きいですね。


■上位モデルの構成比
理想論を言えば、メーカーがラインナップするモデルはどれもたくさん売れてほしいわけです。

コストをかけてラインナップに加えているわけですから、死に筋を作っては効率が悪いわけですね。

逆に言うと売れるのが一部のモデルに偏るのは好ましい姿ではないわけです。

では、各メーカーの売れ筋車種が売上全体のどれぐらいを占めているのかを見てみることにしましょう。

下記は条件を揃えるためにメルセデス、BMW、VWともに上位4車種の合計が全体の何%ぐらいを占めているかをまとめたものです。

 上位4モデル全体合計構成比
Mercedes-Benz41,19067,37861.1%
BMW35,42650,57170.1%
VW42,66647,23390.3%

こうして見ると各社の特徴が際立ってきます。

メルセデスは上位4車種を合計しても全体の販売のうち61.1%程度にしかなりません。
それに対してBMWは70.1%、VWに至っては90.3%にまで跳ね上がります。

これがどういうことを意味してるのかというと…

 ・メルセデスは売れる車種がたくさんある
 ・BMWは上位車種に偏重気味
 ・VWは上位4車種以外のラインナップがあまり売れない


事実、メルセデスはTOP20圏内に6モデルが入っており、5番手がGLCで4,147台、6番手がSクラスと4,115台売れていますが、これらを合計してもまだ73.4%です。

モデルラインナップがVWの19モデルに比べて2倍近い34モデルであることを考慮しても、残り26.6%がその他の車種で構成されており幅広い客層に支えられていることがわかります。

BMWはTOP20圏内に4モデルですが、従来の売れ筋であった1シリーズ、3シリーズ゙、Xシリーズに加えて昨年より本格展開の始まった2シリーズが台数増加に大きく貢献しています。

数字を見ると2シリーズが3シリーズの需要を食っているように見えますが、それでも従来は存在しなかったMPVスタイルのアクティブツアラー&グランツアラーが2シリーズに加わったことでBMWの主要モデルに成長したことが垣間見えます。

それでも残り3割は別のモデルが売れているわけですから客層は広いと言えるのではないでしょうか。
(BMWのモデルラインナップは35)

対するVWはゴルフ、ポロ、パサート、ビートルで90.3%となっており、それ以外の車種(up!、トゥアレグ、ティグアン、シャラン)がまるで売れていないということになります。

ティグアンがモデルチェンジ待ちで売るものがないという状況ではありますが、これだけ他社がSUVの実績を伸ばしている中、VWはSUVが極端に弱いという話になるわけです。

これは日本の施策というより本国の商品戦略の問題と言えるでしょう。

グループであるアウディがQシリーズなどSUVのラインナップが多彩ですがTOP20に食い込むほどの実績を上げていないわけですから、VWとしてもSUVラインナップを充実させたいところではないでしょうか。

そんなティグアンですが1月19日にようやく新型を発表しました。
360万円~という価格設定となりますが、同じく2月に正式発表されるプジョーさんの新型3008とガチンコでぶつかる車種なだけにその動向が注目されます。

日本でのラインナップ補強を考えた場合、中国やアメリカ向けにティグアンのロングボディが設定されるようですが、トゥアレグが死に筋になりつつあるので代わりに導入を検討いたほうがいいんじゃないでしょうかね。

そうでなければ他社に客が流れるだけのような気もします。



■フレンチ4の戦い
前回のエントリーでもイタフラ車が元気だという話題を書きました。
なかでもフランス車4ブランドに絞ってみると一番活躍が目立ったのはプジョーさんでありました。



French4_sales_graph_2016.gif
▲クリックで拡大


2015年の東京モーターショーでクリーンディーゼルの導入を宣言し、2016年夏から一気に攻めの姿勢を見せ、それが年間7,403台(前年比125.3%)と堂々たる実績に繋りました。

昨年はその差824台まで猛追されたルノーさんを再び大きく引き離す格好となったわけですが、こうして見ると輸入車市場の中で“大衆クリーンディーゼル”というぽっかり空いていたパズルのピースをプジョーさんがしっかり埋めたことが成功の原因と言えるのではないでしょうか。

この“パズルのピース”という表現は当BLOGで何回か使っていますが、消費者の嗜好はまさにこのパズルのピースのようなものであり、例えば“女性に愛されるコンパクト”というピースをかつてプジョー206が埋めていました。

それが昨今ではこのピースをFiat500ががっちりと埋めており、これを覆すのは相当な労力が必要となります。

こんな感じで消費者の嗜好の中で長らく温められてきた大衆クリーンディーゼルというピースを国産ではマツダが埋め、海外メーカーではボルボとBMW MINIがかすりましたが、ぴったりと収まるものではありませんでした。

そこにシトロエンC4 BlueHDiが279万円~、308 BlueHDiが299万~という設定で投入してきたインパクトが大きかったわけですね。

シトロエンC4のディーゼルはデリバリーが後回しになっており実質的に308がPCJにおけるクリーンディーゼルの最重要車種に設定されたわけですが、こうして実績として出ているわけですから成功と言えるでしょう。

まさかVWにあんな敵失があるとは思いもしませんでしたが、何はともあれしばらくこのパズルのピースはプジョー&シトロエンが埋める形になるんじゃないでしょうか。

新型1.6L BlueHDiと、新型3008のBlueHDiを滞りなく供給することができれば2017年も好調を維持することができるんじゃないですかね。

シトロエンの話題が出ましたのでついでに触れておきましょう。

2016年は前半の販売低迷をC4カクタスとクリーンディーゼルが埋める形で落ち込みを防ぐことができました。
ただし初期ロットを台数限定にしたためいろんな問題点が噴出した年でもありました。

2017年はC4カクタスのエッセンスを採り入れた新型C3が発売になりますのでこちらに力を入れることになるのでしょう。

一部ではC4カクタスよりC3の方がいいんじゃね?という考え方があるようで、C4カクタスの販売に積極性が見られなかったのもこの新型C3を意識してのことであることが先日PCJの中の人と話していてわかりました。

しかし当方は少し違う考えでありまして、C4カクタスと新型C3の客層は確かに一部では被る部分があるものの、根本的に異なるものだと分析しています。

つまり、売り方をきちんとすれば両車とも異なる客層を獲得することができるため、トータルで見ればより多くの台数を販売できる可能性があるということです。

その意味で今のC4カクタスの限定販売は(欧州で売れているため日本への割り当て台数を確保できないという事情を差し引いても)もったいない気がしております。

くれぐれもC4カクタスが欲しいという客に無理矢理新型C3を売り込むような雑な商談はしないで欲しいと思う次第であります。

その意味ではPCJのオペレーション力とディーラーの対応力が問われる年とも言えるかもしれません。


それともう一つ忘れちゃならないルノーさん。

昨年お会いしたマサシIさんから興味深いお話を聞かせていただきましたが、ルノーに関しても決して楽な状況ではないものの日本市場における取り組みで様々な企業、個人の方との協力関係の下、細かいオペレーションを積み上げてルノーならではの魅力を訴求し続けています。

このあたりはPCJとは違ったインポーターの在り方としてむしろ好ましい状況と言えます。

隣の芝生は青く見えるもんですが、お互いを刺激しあってより魅力的な車種、施策を展開していただきたいものです。

なんだか奥歯にものが挟まったような書き方ですが、2017年のルノーも期待していいんじゃないかと思う次第です。

ただしアルピーヌ、おまえだけは信用ならん。

キナ臭い話が出回ってるようですが、ファンの信頼を裏切るようなことだけはしないでね。


■その他雑感
マセラティが前年割れですがオーダーから納車までのタイムラグを考えると必ずしも2016年を不信と言い切れる根拠は薄いのでは?

アルファロメオの落ち込みはアバルトがその役割を引き継ぎよりプレミアムな方向へ転換中なのでこんなもんでしょう。

ジャガーの好調で割を食ってるのがどこかを考えると楽しいですね。

スマートの躍進でメルセデスグループ vs BMWグループの争いがし烈になってきました。
これは後日改めてエントリーを書きます。


ってことでとりとめのない話が続きましたがオチが見えないまま2017年も引き続き輸入車市場に注目していくことにしましょう。


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