新型308見てきた(2)

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前回のつづき。

新型308の展示車が入ったよ、と連絡をもらってプジョー新横浜まで見に行ってきました。
あいにく試乗車はまだでしたが、なんですか?別のディーラーではもう試乗車を用意しているところや308swも用意できているところがあるそうですね。
さすがに2日連続で試乗に出かけるほどヒマではないので、お楽しみは次週以降ということで。


さて気を取り直して今度は内装を見てみることにしましょう。

運転席に座ってポジションを合わせると、例によってハンドルより高い位置にあるメーター類、7インチのインフォメーションタッチパネル(感圧式)、包まれ感のあるシートといった、新型308の特徴である『i-Cockpit』の意味がわかります。

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ここでタッチパネルに手を伸ばすと、運転視線からそれほど目を動かさずに操作できます。

以前より指摘している通り、画面に気を取られることで運転が疎かになってはいけません。
だからこそ、タッチパネルのポジションとしては、新型308のレイアウトは輸入車の中では理想的と言うことができます。

では、そのタッチパネルの使い勝手はどうなのでしょう?

新型308は、208よりさらに物理ボタンをセンターコンソールから排除して、「ハザード」、「デフロスター」、「リアデフォッガー」、「内外気循環切り替え」の4ボタン以外の機能は、すべてタッチUI(ユーザーインターフェイス)によるパネル操作に集約されました。

208ではエアコン関連の物理スイッチが残っていましたが、308ではパネル周りは非常にスッキリした印象になりました。

デザイン上は悪くないと思います。というより、かなりいい感じです。
使い勝手や安全性がスポイルされてなければいいのですが…

では、そのタッチUIを見てみましょう。

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7インチのモニタの左右に縦に2列アイコンが並んでいます。
左から

「エアコン」
「ドライビングアシスト」
「マルチメディア再生」
「ナビゲーション」※オプションのため写真では非表示

右は

「各種設定」
「プジョーコネクト」(何に使うの?)
「ハンズフリー通話」

となっており、いわゆる大メニューは独立したアイコンとして配されています。
写真ではまだナビがインストールされていないのでナビアイコンが表示されておりません。
インストールされると左下にアイコンが出現します。

これはひと昔前のトヨタの純正ナビがディスプレイの左右に機能別の物理ボタンをつけていたのと同じ発想であり、目的の機能にすぐアクセスできるUIとしての基本をきちんと守っています。

唯一気に入らないのが、このアイコンは平面パネルに表示されておりボタンの凹凸がありません。
また、タップされたことを伝えるフィードバック(振動)が無いため、ブラインド操作ができません。

感圧式タッチパネルのため手袋をしていても操作はできますが、一つ一つの反応がワンテンポ遅れる感じがします。
慣れの問題ではありますが、スマートフォンのスピーディな反応に慣れた人にとってはヤボったい印象を受けるかもしれません。


で、各アイコンをタップするとそれぞれメニュー画面が表示されます。

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▲エアコン
 
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▲各種設定
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▲ドライビングアシスト
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▲プジョーコネクト
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▲マルチメディア再生
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▲ハンズフリー通話

UI的にあまり洗練された印象は受けません。
このあたりのノウハウについてはまだまだ市場の評価とそのフィードバックによる改善が必要になるでしょう。

作りっぱなしにしないで誠意のあるバージョンアップ対応をしていくことも、今後の顧客満足度を高めるためには重要なファクターになるかと思います。


何度も言いますが、基本的に運転中の操作をすることが前提になるわけで、動きながら、振動がある環境の中で正確に操作をするのは物理ボタンのUIよりはるかに難易度が高くなります。

デザインを優先するあまりドライバーを危険に晒すようではいけません。
安全と利便性はトレードオフではないのです。


さて、話は内装の質感に移ります。

センターパネルの素材は写真から感じられるほどはコストは掛かっておらず、シボの表現で低コストであることを隠しています。

逆に言えば、従来と同程度のコストでここまで質感が高いように見せているという意味で、これはうまい演出だと思います。

で、ボタン類が大きく省かれたセンターパネルですが、CDプレイヤーだけは残っています。
208の時はシリコンオーディオを接続して使うという前提でCDプレイヤーは省かれてしまいましたが、308の客層にはまだまだCDが必要だという判断なのでしょうか?

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なんだか、「誰も使ってねぇ気もするけどカセットデッキやMDデッキを一応標準で付けとくか」みたいな時期があったように、CDプレイヤーに関しても微妙な時期ゆえに残ったという気もしますが、ここは思い切ってCDプレイヤーもレスにしてしまった方が商品の提案としてはより明確な主張になった気がしないでもありません。

実際、CDプレイヤーってもうほとんど使われないでしょ?


で、ハッチバックの308 Cieloだけに、DENONのオーディオシステムが搭載されております。
マッキントッシュでもBOSEでもなく、DENONです。

308 Cieloだけは9スピーカーということで、これ見よがしにDENONのロゴが目に入ります。

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そして、ハッチバックの308 Cieloだけがテンパータイヤを無くしてパンク修理キットを搭載し、空いたスペースにサブウーハーを設置するというなかなかチャレンジングなことをやってくれています。

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個人的にあまりパンク修理キットを信頼していないのでテンパータイヤの方がいいなぁという気もしますが、一度も使われずに捨てられるテンパータイヤの多さを考えると、提案としてはこれでいいのかもしれません。

今日は試せなかったのですが、DENONのオーディオをアピールするなら、展示車でハイレゾオーディオのソースを試せるようにしておいた方がいいですよ。


シフトレバーの件についても触れておきましょうね。
208のETG5とは異なり、新型308ではアイシンAW製のトルコン式ATが採用されましたが、シフトレバーのポジションはこんな感じになりました。

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マニュアルモードにおいて従来は押してシフトアップ、引いてシフトダウンというセッティングになっていましたが、新型308においては引いてシフトアップ、押してシフトダウンという方式に改められました。

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208のETG5では従来方式(押してアップ、引いてダウン)となるため、マニュアルモードについてはプジョー車の中で操作体系が異なるラインナップが混在することになります。

208からこの辺を改めるんだったらわからないでもないんですが、どうして新型308から切り替えたんでしょうか?
まぁ、パドルシフトがありますので、その辺はあまり神経質になる要もありませんが。


あと、些細なことですが重要なカップホルダーについて。
シフトレバーの後ろ、コンソールボックスに比較的深底の収納スペースがありまして、中の部分をクルっと倒すとドリンクホルダーになります。

ただし、例によって500mLのペットボトルが刺さるタイプではありません。
これだったらひっくり返す機構の部分を外してしまった方がペットボトルやタンブラーなどいろんな飲み物の納まりがいい気がします。
なんなんでしょうか、コレは。

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さて、こんな感じの新型308ですが、VWゴルフにデザインもコンセプトも似せてきたというのは、従来までの変化球とも言えるデザインから同じ土俵で直球勝負を挑んできたということなのでしょう。

欧州COTYを受賞したことは、それだけ新型308の持つポテンシャルが評価されたわけですし、商品としての実力はそれなりに兼ね備えています。

欧州では。

日本においては、事情が若干異なります。

プジョーとしてアピールしたいのは、追従型クルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキなどのプリクラッシュセーフティを盛り込んだ308 Allureならびに308sw Cielo、そして豪華装備の揃った308 Cieloになるのでしょう。

エントリーグレードであるPremiumは価格こそ先代踏襲ではありますが、VWゴルフと比較して商品力が弱い上に価格が中途半端である感は否めません。

日本市場においては減税と戦略価格で攻めているゴルフと、特に減税もなく守りに入らざるを得ない308では価格においては勝負にはならないでしょう。

しかし新型308は実用的なハッチバックとしての選択肢になったわけで、巷にあふれるVWよりは同じ使い勝手だったらプジョーもアリかね、なんて形で検討してもらえるかもしれません。

価格は販売において重要な要素の一つですが、だからといって価格だけが全てではありません。

ここで大事になるのが、「308を選ぶ理由」もっと言えば「プジョーに乗る理由」を顧客側が見出すことができるか?に懸かっていると言えます。

安心して乗れる商品としてのクオリティなのか。
サービスの行き届いたディーラーの対応なのか。
プジョーというブランドに乗ることにステイタスを感じるからなのか。

まぁ理由は人それぞれですが、単に商品力だけで商売ができる時代は終わりました。

各メーカーはブランド体験とでも言える、そのメーカーのクルマに乗ることで得られる精神的な満足を提供することに注力しています。

ルノーやフィアット、最近ではVWなどが公式ミーティングを開催することにより直接的な体験によるブランドプレミアムを高める取り組みをしております。

シトロエンでさえ、先日のWTCC鈴鹿において新型C4ピカソの展示だけに留まらず、シトロエンレーシングのドライバーがピカソに一般人を乗せてサーキットを走るというサプライズ演出をして体験の機会を設けています。

メルセデスやアウディ、BMWなどは徹底的な顧客対応でプレミアムなブランド体験を提供しています。

それではプジョーはどういった方法で「プジョーに乗る理由」を提案するのでしょうか?

プジョーがフレンチブランドという色が付くことを避けて無国籍な感じを演出したいのならそれはそれで構わないのですが、では具体的にどうしたいのでしょうか?

横浜でクローズドな学会の会場に出張展示をしていたそうですが、そうした方法で医者などステイタス層を取り込むのは確かに重要だとは思います。

しかし、一般の顧客層に対してはどうなのでしょう?

台数を売ることを考えた場合、一般顧客層の支持を集めることは、ステイタス層の取り込みと同じぐらい重要です。
ステイタス層だってプジョーを初めて検討するには今のブランドポジションがどういったものかぐらいは調べるでしょう。
その際、プジョーが所有に足るブランドとして映るかといえば、なかなか厳しいのではないでしょうか。
現在の販売台数がそれを物語っているのではないですか?

なにも必ずオーナー集めたミーティングをやるべきだ、とまでは言いません。いろいろ事情もあるのでしょうから。
じゃあその代わりに何をやろうとしているのか?ぐらいは明確なビジョンを打ち出した方がいいのでないかと思います。

新型308に欠けているものがあるとしたら、それは「プジョーに乗る理由」というとてもシンプルで、なおかつ極めて重要なものではないかという気がしましたとさ。




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