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2017年06月09日

今年はルノーがプジョーさんより売れるかもしれないという話(2)

fortwo_turbo_colorlineup_01.jpg
▲smart fortwo

今年はルノーがプジョーさんより売れるかもしれないという話(1)
http://kaisendon.seesaa.net/article/450690645.html

の続きです。

【今北産業】(今来た人に3行で要約)
 ・輸入車市場が好調で20年ぶりに年間30万台突破か
 ・裾野の広がる大衆ブランド
 ・注目すべきAセグメントの動き


■3代目Twingoとは
元々はスマートが開発していた2人乗りの『fortwo』と4人乗りの『forfour』でしたが、幾度にもおよぶ経営危機によって単独での事業展開では販売台数を見込めず利益確保が難しいとの判断から共同開発のパートナー探しが親会社のダイムラーグループにとっても重要課題となっていました。

そこにゴーン社長率いるルノー・日産アライアンスが開発力向上とコストダウンを見込んでダイムラーとの包括提携を持ちかけました。

この提携はお互いに3.1%の株式を持ち合う資本提携にまで踏み込んだもので、双方の強みを生かしてパワートレインの相互供給やマイクロコンパクトカーの共同開発という戦略を打ち出しました。

その果実の一つが新型の『smart forfour』&『Twingo』でした。

開発はルノーとダイムラーの共同で行われ、スマートの代名詞ともいえる2人乗りの『fortwo』をスマートの専売とし、4人乗りの『forfour』をルノー『Twingo』と兄弟車として展開することで販売のボリュームを稼ごうという戦略となりました。

Aセグメントの4人乗りとはいえRR(リアエンジン・リアドライブ)という独特のレイアウトを獲得した『forfour』と『Twingo』はともにスロベニアのルノーの工場で生産されており、欧州では『Twingo』が先行して販売開始となりました。

国内導入においてはスマートの『fortwo』が需要が見込めないという理由から限定販売という扱いとなり2015年末に販売を開始、そして2016年1月に『forfour』がTwingoに先行して販売開始となりました。

ルノーからも『Twingo』の国内導入がアナウンスされ、2015年の東京モーターショーでは実車のお披露目も行われました。

しかしいつまで経っても発売スケジュールが発表になりません。

2016年5月のカングージャンボリーという絶好のお披露目の機会がありながら、ここでもスルーされてしまいました。

何やら異常事態だとルノーファン界隈がざわついていましたが、メルセデスジャパンが『forfour』の販売強化を打ち出し日本向けの生産ラインのかなりの部分を押さえてしまったため、日本向け『Twingo』の台数を確保できなかったことが導入が遅れた理由だと某所でお聞きしました。

確かにメルセデスグループとしてエントリークラスを担うスマートの販売に力を入れるのは必然であり、そのために生産ラインをコミットで押さえられてしまえば、需要の予測の難しいルノージャポンが力関係で割を食ってしまうのはわからなくもありません。

結局なんだかんだで正式に導入が発表されたのは2016年7月、デリバリー開始は9月にズレこんでしまいました。

そのため一時期販売台数で差が縮まっていたプジョーさんとルノーはプジョーのディーゼル強化が当たったこともありまた大きく差が開く結果となりました。


■注目すべきはAセグメント
さて、そんなわけでAセグメントに関するお話をだらだらと書いてきましたが、ここで一度整理しておきましょう。

2017年6月現在、正規輸入されているAセグメントはざっとこんな感じです。

fiat500pop.png
▲Fiat500

fiatpanda.png
▲Fiat Panda

【Fiat】
 ・500 
 ・Panda 

595main_img_pc.jpg
▲Abarth 595

【Abarth】
 ・595/695 

up_top_01.jpg
▲VW up!

【VW】
 ・up! 

forfour_img_passion.jpg
▲smart forfour

【smart】
 ・fortwo 
 ・forfour 

twingo_pc.jpg
▲Renault Twingo

【Renault】
 ・Twingo 



日本のAセグメント市場を引っ張ってきた絶対王者のFiat500ですが、さすがに発売から9年を迎えて今年に入ってから販売台数が大きく減少しています。

これによりFiatは『Abarth595』を加えても前年割れとなっています。

VWのup!も先日マイナーチェンジを敢行しましたが、欠点だったトランスミッションに変更はなく、客層から見ても状況を大きく挽回出来るほどではなさそうです。


それに対して昨年から本格的に販売を開始したスマートは絶好調で、前年比+14%とハイペースに推移しています。
さすがにコミットして生産ラインを押さえただけのことはあります。

そして本格的にデリバリーの開始したTwingoも好調で、規模的にスマートの半分ぐらいの台数を毎月コンスタントに販売しています。

スマートを販売するメルセデスのディーラーが全国に200店舗以上あるのに対しルノーは68店舗しかありません。

この差を考えるとTwingoの販売は驚異的に絶好調とも言えます。

これによりforfour+Twingoは、Fiat500+Abarth595というAセグメントの絶対王者を台数でも追い抜いており、ひょっとするとポップアイコンのポジションすら奪い取ってしまうかもしれません。
(さすがにそれには別の要因が必要ではありますが)


とはいえ、Aセグメント車の販売はメーカーにとって(スマートやフィアットのように主力商品がAセグメントという場合を除き)メインストリームではありません。

ビジネスの主軸はあくまでその上位セグメントとなります。
スマートもメルセデスグループとして見た場合、ローエンドの客寄せの位置付けとなりメインはCセグメント以上の車種であるわけです。

そんなAセグメントですが、しかし確実に販売数積み増しに貢献してくれます。

これがあるのと無いのとで通年の結果が大きく変わってくるであろうというのが当エントリーの本題であったりするわけです。

なげーよ、まったく…



■今年はルノーがプジョーさんより売れるかもしれないという話
JAIAが毎月発表している輸入車の登録実績をうぉちしていると、各ブランドの勢いというのが可視化されてきて非常におもしろいわけです。

フレンチ4に限って見ても、2016年に再び差が2100台と広がったプジョーさんとルノーの実績ですが、実は2017年5月現在ではルノーがプジョーさんを逆転して+290台ほどリードしています。

ルノーにあってプジョーさんに無いもの。
それがAセグメントのラインナップです。

Twingoの本格デリバリーが始まる前までのルノーは『カングー』&『ルーテシア』という従来の2本柱でプジョーさんの後を追いかけていましたが、そこに3本目の柱となるTwingoが加わったことで良い感じに台数を積み増していることが好調の原因であると言えます。

例えば以下はルノーの毎月の販売台数におけるTwingoのシェアです。

1月 36%
2月 41%
3月 42%
4月 51%
5月 39%

…積み増しってレベルジャネーゾ。
もはや立派な主力に育ってますね。

もちろんこの好調の理由にはTwingoを待望していたルノーファンがきっちり購買行動に走ったという理由もさることながら、MTやスペシャルグレードなど細かな仕様を投入するルノージャポンの戦略が当たっているということでもあります。

もちろんこの勢いがいつまでも続くわけではありません。

対するプジョーさんも2017年前半は待望の3008を発売しながらタマ数を用意できず機会損失をしていましたが、夏には待望のディーゼル仕様が加わります。

そして年末に向けて新型5008の投入も控えています。

夏以降のオペレーション次第で一気に持ち直してくることも予想できますが、着実に台数を積み上げるAセグメントのラインナップがありません。

果たしてこの両者のバトルはどのような結末を迎えるのでしょうか?

もちろんプジョーファンである以上プジョーさんに頑張って欲しいと思っているのですが、最近の巧みなマーケティングによってファンを増やしているルノーがこれからどこまで伸びるのか?という業界うぉっちゃー的な目線ではルノーに期待している部分も正直言ってあります。

ちなみにもし年間販売でルノーがプジョーさんを上回ると、1987年に逆転を許してから実に30年ぶりのフレンチトップ奪還となるわけです。

French4_sales_graph_2016.gif
▲クリックで拡大


輸入車市場20年ぶりに30万台達成、そしてルノー30年ぶりのフレンチ首位奪還なんて話題は、メディア受けするネタではありますね。

もちろん台数がすべてなどと言うつもりはありません。
あくまで、客が支持するものが売れる。
だから売れるものには理由がある、というお話なわけです。



■最後に
現時点でAセグメントのラインナップを持っていないプジョーさんですが、だからといってルノーに追従する形で『108』を国内に投入すべきだ、という一部の意見には当方は現時点では賛成しません。

今のプジョーさんには、108を投入する根拠が希薄だからです。

例えばカングーに対抗してパートナーTepeeを導入したとして売れるでしょうか?

おそらくほとんど売れないと思います。

これはカングーがジャンボリーを始めとした演出によって、所有することの意義をオーナーが見出せる環境が構築されているからこそ売れているわけで、そうした文化がまったくない状況でプジョーさんがTeepeeを発売しても、実用面を評価して購入する層が一定数はいるでしょうが、それ以上の広がりが期待できません。

かつてのプジョーさんにはAセグメントとしてエントリーの役割を担った『106』がありました。
106はスポーツ走行のベース車両として今でも中古市場で人気があります。

しかし後継となった『107』は直接的に106のコンセプトを継承したものではなく、市場のニーズを隙なく埋めるためにトヨタとの合弁で開発された車種でした。

そういった事情もあって106的なイメージを期待する層を満足させることは難しく、採算性の面からも国内への導入が見送られたのだと思います。

さらにその後継の『108』も107のキープコンセプトでした。

フレンチブルーミーティングやPEUGEOT LION MEETINGで並行輸入された108を拝見しましたが、悪いクルマだとは思いませんでしたが、これは!という魅力の打ち出し方が難しいな…という印象を持ちました。

もちろん選択肢として『108』が選べるようになればそれはそれでより多くのプジョーファンを獲得できる可能性を秘めてはいます。

ただそのためには単にラインナップを揃えるだけでなく、“108を選ぶ理由=108を欲しくなる理由”という演出を周到に行う必要があるのではないかと思います。

既存車種、ひいてはプジョーというブランド全般にこうした演出があまり成されていない現状においては、まず取り組むべきは車種の追加ではなく個々の魅力演出への取り組みであると考えます。

Twingoはスマートとビジネス上の都合で兄弟車として発売されましたが、それを欲しいと思わせる演出を加えたのはルノージャポンです。

そう考えるとプジョーさんに足りないのは実はAセグメントではなく、演出力なのではないか?

そんなことをふと考えましたとさ。


posted by 海鮮丼太郎 at 07:00| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 車(Car&Culture) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月08日

今年はルノーがプジョーさんより売れるかもしれないという話(1)

twingo_pc.jpg

【今北産業】(今来た人に3行で要約)
 ・輸入車市場が好調で20年ぶりに年間30万台突破か
 ・裾野の広がる大衆ブランド
 ・注目すべきAセグメントの動き


輸入車市場が全般的に好調です。
メルセデスの勢いが止まらないというのはニュースなどで目にされている方も多いかと思います。

しかし他のブランドも総じて前年対比で昨年を上回る実績を上げており、上位20の主要ブランドで5月末時点で前年割れしているのは

Audi96.4%
Fiat89.5%
Land Rover92.7%
Alfa Romeo74.8%
DS87.1%
 
だけとなっており、ディーゼルゲート事件で大きく後退を余儀なくされたVWでさえも前年を上回る台数が売れているわけです。

2016年の年間輸入車登録台数は294,063台であり、前年比+2.1%の推移で伸びていけば念願の30万台到達が見えてきました。

奇しくも前回の年間30万台越えは1997年でしたので、実に20年ぶりの活況ということになるわけです。
あまり先の話をしてもしょうがありませんが、関係者の鼻息が荒くなるのもわからなくはありません。

ですが、この年間30万台という目標は達成するだろうと個人的には予測しています。

その根拠となるのが今回のエントリーで話題にするルノーの好調です。


■今の輸入車市場のトレンド
一般的に輸入車に対するイメージは高級車といったイメージを持たれるかと思います。
数字の面で行っても、確かにそれはある面においては事実です。

例えば2016年の実績を例にドイツ勢の高級ブランドであるメルセデス、BMW、アウディの実績を見てみましょう。

1位 Mercedes-Benz67,378台
2位 BMW50,571台
4位 Audi28,502台
3ブランド合計146,451台

2016年の輸入車全体の合計は294,063台でしたので、この3ブランドで全体の半分となる49.8%を占めています。

一方でVW、BMW MINI、Volvoを始めとした大衆ブランドも約12.5万台ほどの市場を形成しています。
(定義が難しいのですが上限としてBMW MINI、Abarth、DSまでは大衆ブランド派生とカテゴライズしました)

大衆ブランドは全般的に高級ブランドに比べると価格も車格も低く抑えられており、その分台数が多く売れる傾向があります。
もちろん顧客のニーズが合致すれば、の話ですが。

特に輸入車が獲得を狙っている国産車からの乗り換えについては燃費や先進装備面、価格面でもそれほど大きな差はなくなってきているので、顧客獲得のチャンスが到来していると言えます。

各メーカーの努力により輸入車の選択肢が広がったことで高級ブランドだけでなく大衆ブランドまで需要のすそ野が拡大していることが、昨今の輸入車市場の好調を支えていると言えます。



■Aセグメントの位置付け
Aセグメントは主に全長が3750mm以下の車種の分類となります。
日本で言うと軽自動車やトヨタ『PASSO』などの小型車に相当します。

ちなみに欧州車の最大のボリュームゾーンであるB/C/Dセグメントの目安は以下の通りとなります。

Bセグメント 全長4,200mm以下
Cセグメント 全長4,500mm以下
Dセグメント 全長4,800mm以下


日本という特殊性の高い市場で輸入車が勝負しようとするならば、まずは一番ニーズの厚い層のラインナップを強化するのが必然です。

そのため高級ブランドが強い日本では輸入車はC〜Dセグメントがボリュームゾーンとなります。

それに続くのがBセグメントとなり、この辺りはどのメーカーも積極的にラインナップを充実させています。

それに対してAセグメントは本国でラインナップしていながら国内市場への投入に消極的な姿勢が目立ちます。

理由は様々ですが、一般的にAセグメントは単価が安くその割に台数があまり見込めないため利益を出すのが難しいという要因が大きかったと言えます。

BMWに買収される前の『クラシックMINI』やルノー『Twingo』、スマートの『fortwo』といった限定的なヒットがあったものの、マニア向けの域を出ず市場の形成までには至りませんでした。

その流れが大きく変わったのが2008年にFiatが販売を開始した新型の『500』シリーズでした。
(2002年に『BMW MINI』が発売されるがクラシックMINIより巨大化しBセグメントへ移行)

構造こそ違うものの往年のチンクェチェントを彷彿とさせるデザインによってポップアインのポジションを獲得し、唯一無二の存在感を発揮してきました。

500の成功を受けてフィアットはアバルト仕様の追加や細かい限定仕様を次々と投入することで国内市場で大きく存在感を発揮するようになりましたが、これに追従する動きはあまり見られませんでした。

2012年にVWが日本市場への取り組み強化を狙い、世界戦略車である『up!』の国内導入に踏み切りました。

VWは遡ること2001年から最少クラスである『LUPO』を販売していましたが、セールス不調により2006年で販売を終息しており、6年ぶりのAセグメント参入となりました。

up!については国産車からの乗り換えを促すために158万円〜という戦略価格とこのクラスとしては珍しかった自動ブレーキを標準装備し、CMには久保田利伸を起用するなど、並々ならぬ力の入れようでした。

その取り組みは当BLOGでも下記のエントリーで触れていたりします。


up!の戦略に見るブランド忠誠度とグッズの関係について


しかし当初軽自動車と同じぐらいの値段で買えるということで大いに注目されたものの、up!が採用したシングルクラッチトランスミッション(ASG)の独特のクセが敬遠され、VWが当初目論んでいたほどの実績を上げることができませんでした。
(ATの構造的はFiat500と同様なのですが、VWというブランドに消費者が求めるものは違っていたという厳しい現実となりました)

またFiat500が君臨するおしゃれなポップアイコンの座も射落とすことはできず、なかなか厳しい戦いを強いられています。

そうした流れの中で次に放たれた矢がスマート&ルノーの共同開発となった『新型smart/Twingo』でした。



なんと本題に触れることもなく後編につづく。


posted by 海鮮丼太郎 at 22:59| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 車(Car&Culture) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする